カンボジア副首相、バンコクで日本企業に投資を力強く呼びかけ(カンボジア、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月11日 9時55分
ジェトロなどは11月1日、カンボジアのスン・チャントール副首相兼カンボジア開発評議会(CDC)第1副議長を招待の上、「タイプラスワンとしてのカンボジア投資セミナー」をバンコクで開催し、カンボジアのビジネス環境を紹介した(注1)。カンボジアでの事業展開に関心のある在タイ日系企業を中心に247人(会場66人、オンライン181人)が参加した。
「ASEAN投資報告書(AIR)2024年版」によると、2023年のカンボジアへの外国直接投資(FDI)は製造業を中心に過去最高の40億ドルを記録した。今後、米中対立の受け皿として、カンボジアがグローバル・サプライチェーンの一翼を担うことが期待されている。一方、日本企業によるカンボジアへの投資は近年低迷しており、カンボジア政府はタイやベトナムなどの周辺国の進出日系企業からも投資を呼び込みたい狙いだ。
基調講演を行ったスン・チャントール副首相は、カンボジアが過去20年にわたり安定的に経済成長率(実質GDP成長率)5%以上を達成しており、今後も高成長が予測されている点、英語を話せる国民が多く、人口増加により労働力が安定して供給される点などをアピールした。また、国内の電力不足に起因する電気代の高さについては、政府が2024年9月に23件の電力分野の投資プロジェクトを承認したことを踏まえ、将来的に安定供給されるとの見通しを示した。なお、カンボジアでの違法カジノや特殊詐欺などの事件が投資誘致の阻害要因になっているとの指摘(注2)に対して、スン・チャントール副首相は、「政府として犯罪行為の撲滅に取り組む」という強い意志を示した。
パネルディスカッションでは、カンボジア進出日系企業などが登壇し、同国の課題である「物流」について、ビジネス環境を変え得るゲームチェンジャーとなる取り組みを紹介した。ロイヤルグループ・ポイペト経済特区は、自社で通関士を雇い、地場物流会社を活用せず、賄賂を一切払わない取り組みを行った結果、タイ側とポイペト(カンボジア西部の国境沿いの町)の輸送コストを1~2割削減できたと発表した。イオンモール・カンボジア・ロジプラスは、シアヌークビルに有するカンボジア唯一の保税・非居住者倉庫を活用することで、カンボジアに法人を持たない外国企業がPEリスク(注3)なしに長期保管できるサービスを紹介した。
セミナーであいさつするスン・チャントール副首相(ジェトロ撮影)
セミナー会場の様子(ジェトロ撮影)
(注1)主催はジェトロ、CDC、日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)。カンボジア日本人商工会(JBAC)、バンコク日本人商工会議所(JCC)が後援した。
(注2)2024年9月に開催された第28回日本カンボジア官民合同会議で、日本側が指摘していた。なお、官民合同会議は、日カンボジア投資協定の締結を受けて設置された2国間の枠組み。年に2回、カンボジアに進出した日系企業が抱える投資環境上の課題を政府に提言するもの。カンボジア側は主に政府関係者、日本側は大使館、カンボジア日本人商工会(JBAC)、国際協力機構(JICA)、ジェトロが出席。
(注3)非居住者に対する法人税や外国契約者税などの課税リスク。
(若林康平)
(カンボジア、日本)
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