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トルコ産業界、国内のシリア難民の帰還の行方を注視(トルコ、シリア)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月23日 0時40分

トルコの産業界では、シリアのアサド政権の崩壊により、トルコ国内のシリア人難民の帰還の行方を注視する動きが出ている。シリアで期待される新政権の成立は、両国間の自由貿易協定(FTA、2007年発効、2011年一時停止)の一時停止により14年近く停滞してきた(2024年12月19日記事参照)両国のビジネス関係を回復させることだけでなく、長期にわたりトルコに廉価な労働力を提供してきたシリア人の帰国が、トルコの労働市場に悪影響を与えるという懸念もある。ただ、トルコで生活基盤を築き、帰国を望まないシリア人も多く、難民問題の行方は不透明だ。

トルコ政府によると、シリア内戦によってトルコに流入したシリア難民は約370万人(注)に達する。その対応を巡っては、当初の同情から負担へと変わり、トルコ国民の間では排斥の動きすらみられるようになっていた。他方、トルコにくすぶる高インフレと最低賃金上昇による人件費コストの急騰により、低コスト労働者となったシリア人への依存もみられる。2023年には、トルコ労働社会保障省がシリア人約10万8,250人に労働許可を付与した、と伝えられる(「デイリー・ニュース」2024年12月10日)。このため、シリア人の帰国熱が高まれば、労働コストの上昇につながる可能性もある。

こうした懸念もある中、ビジネス界では比較的楽観的な意見も多く見られる。まず、トルコでの生活になじんだシリア人すべてが帰国すると考えるのは非現実的で、特にトルコで起業したシリア人やホワイトカラーの人々はトルコにとどまる可能性が高い、と指摘する声がある。また、帰国が進んだとしても、トルコ語やトルコのビジネス慣習を学んだシリア人が両国間のビジネス関係をより良い方向に進めてくれるとの期待もある(2024年12月10日付国営アナドル通信)。いずれにせよ、失業率の高いトルコでは、シリア人の帰国による労働力不足は一時的なものとみているようだ(「デイリー・ニュース」2024年12月10日)。また、シリア人の帰国により、政府予算への負担の軽減に寄与するとの期待もある。

(注)レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の発言によると、2024年12月時点で290万人まで減少した。なお、シリア難民はトルコでは、正確には難民ではないが、便宜上「難民」で統一する。

(中島敏博)

(トルコ、シリア)

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