米商務省、輸出管理規制品目の横流しリスクのある事業体を通知するガイダンスを公表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月11日 15時55分
米国商務省産業安全保障局(BIS)は7月10日、輸出管理規則(EAR)で規制された製品を懸念国やエンティティー・リスト(EL)掲載者へ横流しするリスクのある事業体を産業界や学術界に通知するためのガイダンスを公表した。
BISはエンドユーザーを、未検証リスト(UVL)、EL、軍事エンドユーザー(MEU)リスト、輸出特権剥奪リスト(DPL)のいずれかに指定することで管理している(注1)。今回のガイダンスは、これらリストには掲載されていないものの、リストに掲載されている事業体へEAR規制品目を横流しする事業者を企業などに通知するための手段や、それに対する企業などの責任や罰則などを概説するものとなっている。ガイダンスでは具体的に、次の3点を説明している。
〇サプライヤー・リスト・レター
BISは3月から、共通の高度優先品目リスト(CHPL)品目(注2)をロシアに横流ししている事業者を、サプライヤー・リスト・レターとして企業や大学へ送付し始めた。当該通知を受け取った場合、自身の取引先にサプライヤー・リストに掲載されている事業体がいないかを精査すべき。
〇プロジェクト・ガーディアン・リクエストとレッド・フラッグ・レター
プロジェクト・ガーディアン・リクエストは、EAR品目を不正に取得しようとする外国の敵対者の情報をBISが企業や大学に通知し、特定の相手との取引や特定の品目に関する問い合わせに注意を求めるもの。企業や大学はそうした問い合わせなどがあった場合、拒否し(最低でも一時差し止め)、最寄りの輸出取締課(EEFO)に連絡し、対処方法の指導を受けるべき。レッド・フラッグ・レターは、企業などの取引先が、過去にEARに違反したのと同種の品目を輸出などしようとしていることを通知するもの。レッド・フラッグ・レターを受け取った場合、取引を実施する前に、取引先がEARに違反する活動をしていないことを確認するデューデリジェンス(DD)が求められる。DD後に、取引実施を決定する場合は、必要な情報を確認するためにとった手順、取引するとの結論に至った意思決定プロセスなど、詳細な記録を文書として残すべき。
〇イズ・インフォームド・レター
イズ・インフォームド・レターを受け取った企業などは、国家安全保障上の懸念などから、特定の取引において必要となる輸出許可(ライセンス)要件を「知らされる」。レターには、ライセンス要件の対象となる品目または米国人の活動の範囲、BISによる審査方針、申請プロセスが明記されている。
ガイダンスには、英国が運営するCHPL品目のロシアへの横流しを監視するトレード・インテグリティ・プロジェクト(TIP)を活用した、取引先スクリーニングのベストプラクティスも含まれている。
BISで輸出管理の執行を担当するマシュー・アクセルロッド次官補は「産業界や学術界と協力して横流しリスクを特定することは、米国の輸出を守る執行戦略の要である」とし、これら異なる手段を複合的に使うことで、「米国の輸出者がより適切に取引先をスクリーニングできるよう支援し、米国の国家安全保障を保護する」と述べた。
(注1)UVL、ELなどの詳細や検索方法は、ジェトロの「米商務省国際貿易局 統合スクリーニングリスト (CSL)の利用ガイド」を参照。
(注2)ロシアの防衛産業基盤に重要な製品として、米国が英国やオーストラリアなどとともに2023年9月に特定した、関税分類番号(HSコード)6桁のリスト(2024年2月26日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国)
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