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タイ米USTR代表、同盟国などとの協調が前任のライトハイザー氏との違いと強調(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月5日 14時0分

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は6月3日、米国のシンクタンク、アトランティックカウンシルが主催したイベントに登壇した。タイ代表はこれまで同様、自由貿易の拡大のみを求める通商政策に否定的な姿勢を示したほか、バイデン政権の通商政策は国際主義である点で、トランプ前政権とは異なると主張した。

タイ代表は司会者の質問に答えながら、貿易自由化のみを追求したグローバリゼーションは、効率性をもたらし、利益を拡大し、コストを最小化した一方で、特定のサプライヤーや特定の国に集中したサプライチェーンが脆弱(ぜいじゃく)性をもたらしたなどとして、異なるコストを生んだと指摘した。さらに、特定の国にサプライチェーンが集中している現状が地政学的緊張を高めているとも述べた。

デジタル貿易に関しては、電子商取引としてインターネット上で単なるモノの売り買いをしていた20年前と、人工知能(AI)などによって多くのことが成し遂げられる現代では、国際的にデータが移動する意味が全く異なるとし、何が公共の利益となるのか、議会、産業、業界大手、中小企業、労働者などから知恵を結集することが先決だと語った。USTRが単独で答えを出すのではなく、立ち止まることがリーダーシップだとも述べた。その上で、新しい技術をどう規制するかをまずは米国内でルール化し、その後に貿易相手国と議論すべきとの認識を示した。

タイ代表は5月末に「フィナンシャル・タイムズ」紙に寄稿した論考でも、同様の主張を行っている(2024年5月30日記事参照)。

質疑応答では、タイ代表の前任となるロバート・ライトハイザー前代表との政策方針が一致している点と、異なる点について質問された。タイ代表は、一致している点は「貿易に対するアプローチを変えなければならないこと、世界は(過去と比べて)大きく異なっていること、米国内で(自由貿易による)恩恵が十分に包摂的でないことへのコミットメント」だとした。一方で、異なる点については、「例として、対中政策における「レトリック(聞き手を説得する弁論技術)」だと指摘した。トランプ政権下では、単独行動主義的な通商政策が取られていたが、バイデン政権では同盟国や友好国と連携し、国際主義であることを強調した。

トランプ前政権下で取った1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税措置は、原則として全世界に対して一律に賦課していたが、バイデン政権下では日本やEUなどの同盟国や友好国に対する例外措置を拡大した(2024年6月4日記事参照、注1)。一方で、バイデン政権の通商政策は、中国に対する1974年通商法301条に基づく対中追加関税賦課や(注2)、輸出管理でのエンティティーリストの積極的な活用など、多くの部分でトランプ政権の方針を踏襲している。

仮にドナルド・トランプ前大統領が11月の大統領選挙で勝利した場合、ライトハイザー氏は次期政権の経済政策を担う要職に就く可能性が高いと度々報じられている。タイ代表は、USTRが1962年に設立されて以降の62年間で4年以上USTR代表を務めた者はいないため、バイデン大統領が勝利した場合でも続投しないとの見方が多勢となっている(政治専門紙「ポリティコ」6月3日)。

(注1)トランプ政権下でも、メキシコやカナダなど、232条に基づく追加関税の例外措置は取られた。

(注2)USTRは5月に301条に基づく対中追加関税の見直しを終え、一部品目では、追加関税率の引き上げなどを提案している(2024年5月23日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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