商務部、米アパレル大手など2社をエンティティー・リストに追加(中国、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年2月4日 16時15分
中国商務部は2月4日、「対外貿易法」「国家安全法」「反外国制裁法」などの関連法に基づき、「信頼できないエンティティー・リスト」業務機関(注1)が、米国のアパレル大手PVHグループ(注2)および遺伝子検査機器メーカーのイルミナの2社を「信頼できないエンティティー・リスト」に追加すると決定した旨の公告を発表した(即日実施)。
公告によると、両社は通常の市場取引のルールに反して中国企業との正常な取引を中断し、中国企業に対して差別的措置を取り、その合法的権益を深刻に損なった、と指摘した。その上で、今後関連する法律法規にのっとり、両社に対して相応の措置を取るとした。
PVHグループについては、2024年9月24日に商務部が新彊関連製品への差別疑惑で調査を行うと発表していた(2024年10月7日記事参照、注3)。その後、商務部は2025年1月16日の報道官談話で、同グループには新彊に関する不当な行為が存在すると初歩的に認定し、「信頼できないエンティティー・リスト」業務機関が同グループを近く聴取するとしていた。また、イルミナは、遺伝子検査機器の世界最大手とされており、中国上海市にも生産拠点を置いている。
今回発表された公告には具体的な措置は記載されていないものの、同公告に記載されていない事項は「信頼できないエンティティー・リスト規定」に基づいて実施するとしている。同規定第10条では、リストに掲載された外国エンティティーに対して、中国関連の輸出入の制限・禁止、中国域内への投資の制限・禁止、同エンティティーの関係者・輸送手段などの中国への入境の制限・禁止、同エンティティーの関係者の中国域内での就業許可や滞在・居留資格の制限・取り消し、情状に相当する額の罰金、その他必要な措置などを取ることを決定できるとしている。
「信頼できないエンティティー・リスト」には、これまで主に台湾への武器売却に関与した米国の軍事関連企業が掲載されている(2023年2月20日記事、2024年6月28日記事、2025年1月10日記事参照)。なお、商務部はこれまで、中国は「信頼できないエンティティー・リスト」の問題を一貫して慎重に処理しており、同リストは、市場のルールを破壊し、中国の法律に違反するごく一部の外国エンティティーに対してのみ適用するものだと繰り返し説明している。
米国トランプ政権は2月4日(現地時間)から、中国産の全製品に対して10%の追加関税を課すと発表(2025年2月3日記事、同2月4日記事参照)しており、中国商務部は2月2日の報道官談話でこれに強い不満を表明し、中国の権益を守るために相応の対抗措置を取ると表明していた。
(注1)「信頼できないエンティティー・リスト」規定第4条によると、「信頼できないエンティティー・リスト」業務機関は、同リスト制度の実施のために中央国家機関の関連部門が参加するもので、事務局は国務院商務主管部門(商務部)に置かれている。同規定第5条によると、同機関は職権あるいは関係者からの提言や通報に基づいて外国エンティティーに対して調査を行うか否かを決定するものとされている(同業務機関の調査決定からリスト掲載までの流れなどの詳細は解説記事「『信頼できないエンティティー・リスト』制度の概要」参照)。
(注2)同グループは、傘下にカルバン・クライン、トミー・ヒルフィガーなどの有名ブランドを有する。
(注3)調査開始を決定した公告の公布日に商務部ウェブサイトに掲載された商務部産業安全輸出入管制局担当者の談話では、同社に対して調査を実施した理由として、PVHグループが事実に基づく根拠がない状況で、正常な市場取引の原則に反して新彊産綿花などの製品を理由なく排斥し、関連する中国企業の合法的権益に重大な損害を与え、中国の主権、安全、発展の利益を損なった疑いがあるため、と説明している。
(小宮昇平)
(中国、米国)
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