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カーボンプライシング通じた政府収入は過去最高に、世界銀行発表(世界)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月28日 1時5分

世界銀行は5月21日、2024年版「カーボンプライシングの現状と傾向」を発表した。同報告によると、4月時点に世界で導入されているカーボンプライシングの施策(注1)は2023年報告発表時(2023年5月25日記事参照)から2件増え、75件となった。これらの施策がカバーする世界の温室効果ガス(GHG)排出量は24%で、前年比で1%増のほぼ横ばいの状態。

炭素税と排出権取引制度(ETS)による導入国・地域政府の収入(2023年)は世界全体で前年比90億ドル増の1,040億ドルとなり、初めて1,000億ドルを超えた。依然としてETSがカーボンプライシングの収入の大半を占める。収入の半分以上は気候変動対策や自然環境関係のプログラム向けの予算として使用された。

国・地域別では、ブラジル、インド、チリ、コロンビア、トルコなどの中所得国で、ETSのパイロットプロジェクトが開始されるなど、カーボンプライシング導入に向けた前進がみられる。また、世界銀行は、2023年10月から移行期間が始まったEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、2023年8月31日付地域・分析レポート「EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に備える」参照、注2)が各国政府で鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、電力といったCBAM対象業種でのカーボンプライシングの導入を後押ししていると指摘する。

ETSの取引価格を見ると、世界の排出量の約5%をカバーする10のETSが前年比で名目価格を下げた。その中には、長年続いてきたニュージーランド、韓国、EU、英国のETSも含まれる。EUでは、エネルギー危機後の経済停滞と化石エネルギー消費量の減少が産業部門と電力部門の排出削減に貢献し、EU-ETSの価格に下落圧力をかけた。ニュージーランドでは、今後数年間に排出枠が過剰になる可能性など、不確実性に対する市場の危機感により、価格が下落した。一方、運用されている炭素税の半分以上が関税引き上げや税制改革の結果、過去1年間に名目税率を引き上げ、残りの炭素税は現行税率を維持している。

他方、2023年の世界のカーボンクレジット(注3)発行は2年連続で減少した。クレジットの償却は発行額を大幅に下回り、市場には償却されていないクレジットのプールが増加している。同報告はその一因として、市場の健全性を巡る懸念の根強さを挙げている。

(注1)二酸化炭素(CO2)排出に対する価格付けを行うことで、排出側での排出抑制を促す。カーボンプライシングの主な政策には炭素税と排出量取引制度(ETS)がある。

(注2)ジェトロの調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)(2024年2月)」では、制度の概要や移行期間に必要な対応、今後想定される動きを中心に解説している。

(注3)排出削減によって得られる単位。クレジットを取引できるクレジット市場には、国連・政府主導のものと、民間主導のもの(ボランタリークレジット)がある。

(板谷幸歩)

(世界)

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