米USTR、中国の海事・物流・造船分野に関する301条調査結果を公表、輸入制限措置の内容は今後決定(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月20日 11時0分
米国通商代表部(USTR)は1月16日、中国の海事・物流・造船分野に関する措置・政策・慣行を対象とした、1974年通商法301条に基づく調査が完了したと発表した。調査の結果、各分野の中国製品の米国輸入が、301条に基づく追加関税などの輸入制限措置の対象になる(actionable)と判断した。ただし、具体的な輸入制限措置の内容は示されなかった。USTRは、措置は今後検討するとしており、米国現地1月20日に発足するトランプ政権下で決定されることになる(注1)。
301条は、外国の通商措置や政策、慣行が通商協定に規定した米国の権利を侵害する場合や、不合理または差別的で米国の商業に負担や制限を与える場合に、USTRに追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている(注2)。USTRは2024年3月に調査に関する請願書を国内の複数の労働組合から受理し(2024年3月13日記事参照)、2024年4月に調査を開始していた(2024年4月18日記事参照)。
USTRが同日公表した調査報告書では、中国が海事・物流・造船分野の不合理な支配を目的として非市場経済的な措置などを講じている、と指摘した。また、これが企業の商機の減少と競争の減退を招くとともに、サプライチェーンの対中依存を高めて経済安全保障上のリスクを生じさせ、米国経済に深刻な負担を与えていると結論付けた。
具体的な輸入制限措置の内容、時期、対象品目、パブリックコメントの募集予定などの詳細は示されなかったが、調査を通じて輸入制限措置の対象になると判断された場合には、USTRは「適切で実行可能な措置を講じること」が義務付けられる。このため、何らかの措置が講じられることは確実とみられ、バイデン政権がトランプ次期政権に宿題を残したかたちとなった。
なお、ドナルド・トランプ次期大統領は、2025年1月6日のラジオインタビューで「われわれには船が必要だ。聞くところによれば、中国は4日に1隻の船を建造している。そしてわれわれはそれを眺めているだけで、甚大な損害を被っている」と述べている。
連邦議会でも、下院中国特別委員会のジョン・ムーレナー委員長(共和党、ミシガン州)は2024年6月の公聴会で、造船産業の中国の競争優位性は米国の国家安全保障上のリスクだと指摘し、輸入制限措置を講じる必要性を訴えていた(2024年6月28日記事参照)。また、下院のマイク・ジョンソン議長(共和党、ルイジアナ州)は2024年7月の講演で、歳出削減の方向性の中でも、安全保障は優先事項であるとして、海事分野に投資する必要性を強調していた(2024年7月10日記事参照)。
(注1)ニカラグアの労働権・人権・法の支配に関する301条調査(2024年12月11日記事参照)も、バイデン政権下で調査が開始されたが、調査結果や措置内容は発表されていない。
(注2)米国が中国原産品の輸入に課す7.5~100%の追加関税も301条に基づく(2024年6月18日付地域・分析レポート参照)。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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