米国務省、途上国向け気候変動対策支援が目標額を達成見込みと発表(米国、中国、日本、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツ、韓国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月20日 11時45分
米国国務省は11月18日、2021年にジョー・バイデン大統領が表明した途上国向け気候変動対策支援を2024年末までに110億ドル以上に拡大する公約を達成する見込みと発表した。この額は、バラク・オバマ政権(2009~2017年)での最高支援額の4倍という野心的な目標だが、バイデン政権は拠出額を年々増額し、2023年には約95億ドルまで拡大していた。これにより、国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)などで合意した途上国向け資金を1,000億ドルまで拡大・維持する目標の実現に、米国も義務を果たしたかたちだ。
ただ、COP29で議論されている途上国への気候変動対策資金の増額(2024年11月12日記事参照)に、米国が今後どの程度コミットするかは不透明だ。ドナルド・トランプ次期大統領はパリ協定に否定的な見解を維持しており(2024年7月1日記事参照)、2025年1月の次期政権発足後、再びパリ協定から離脱するとみられている。1期目のトランプ政権下では、協定からの離脱に伴い、緑の気候対策基金(Green Climate Fund、GFC)への拠出停止などの措置がとられ、次期政権でも途上国向け気候変動対策支援は削減の対象となる可能性が高い。
COP29には、米国から政府関係者が多く参加しており、政権交代を控えて与野党が互いに牽制し合う様子もみられる。米国政府代表団を率いるジョン・ポデスタ大統領上級補佐官(国際気候政策)は11月11日の記者会見で「トランプ政権下の米国政府は気候変動対策を後回しにするかもしれないが、気候変動を食い止める取り組みは、米国で責任と情熱、信念を持って継続される」と述べた。また、COP担当知事であるワシントン州のジェイ・インスレー知事(民主党)も「トランプ氏の勝利はワシントン州を止めるものではないと確信している。州は国家を越えて行動することができる」と述べ、州レベルで気候変動に引き続き取り組む姿勢を示している(11月15日「ポリティコ」)。
このように、民主党側が気候変動対策に対する米国のコミットメント継続を訴える一方、共和党側からCOP29に参加したオーガスト・フルーガー下院議員(共和党、テキサス州)は「米国の天然ガスは、ほかのどの国より排出量削減に貢献してきた」と述べるなど、化石燃料を擁護する姿勢を明確にした。そのほかの共和党議員も会議参加に先立って「米国の政府代表団はCOP29でトランプ氏の優先事項に反する可能性のあるいかなる結果にも同意すべきではない」と述べており、エネルギーコストの削減などを掲げて勝利した民意を尊重すべきとして、民主党側を牽制した(11月16日「ポリティコ」)。
バイデン政権は政権交代前に気候変動対策を可能な限り進めるべく、インフレ削減法(IRA)に基づく税額控除の最終規則化に向けた作業などを急いでいるが、今後2カ月でどの程度取り組みが進むかが注目される。
(加藤翔一)
(米国、中国、日本、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツ、韓国)
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