1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

米国の貿易に対する見方は「混迷」、米シンクタンクによる世論調査(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月15日 13時25分

米国のシンクタンク、ケイトー研究所は8月7日、貿易とグローバリゼーションに関する世論調査結果を発表(注)した。過半数の米国民は米国経済にとって貿易を好意的に受け止めているものの、多数が製造業を害するとも回答しており、通商政策の専門家は、貿易に対する米国民の関心が低いために、「混迷している」と分析した。

調査結果によると、貿易が米国経済にとって「良い」と回答した割合は66%で、米国が他国と貿易を拡大することに「賛成」とした割合は63%だった。一方で、貿易による悪影響を懸念している回答もあり、「自由貿易協定(FTA)が米国人の賃金を低下させる」との回答は39%、「雇用を減らす」も39%で、いずれも「上昇させる」を上回った。「貿易が製造業を害する」との回答は79%に上った。

また、「関税によって商品の価格の上昇を懸念している」とした割合は75%で、米国産業を保護するための関税であっても、ジーンズの価格が10ドル超上昇する場合は関税に反対すると66%が回答した。他国との関係では、「他国が米国製品への貿易制限を引き下げた場合に限り、米国は他国製品への関税やその他の貿易制限を引き下げるべき」との回答は62%だった。共和党の政策綱領では、米国へ輸出する国がある製品に課している関税率と同じ関税率を米国輸入時にも課すトランプ互恵通商法の成立を提案している(2024年7月9日記事参照)。一方で、「他国が米国製品への貿易制限を引き下げなくても、米国は関税や貿易制限を引き下げるべき」と回答した割合は23%にとどまった。米国はこれまで、率先して関税率を削減するなどして自由貿易を牽引してきた。実際に、米国の譲許税率(単純平均)は3.4%と、主要国の中では最も低く、最恵国(MFN)税率(同)も3.3%で、他国と比して低く設定している。だが、今回の世論調査は、そうしたこれまでの米国の姿勢に否定的な結果となった。

主要な貿易相手国別では、カナダが「米国と公正な貿易を行っている」と回答した割合は66%だった。日本に対しては49%、メキシコは43%だった。メキシコに対しては、公正とみる割合が、民主党支持者間では53%だが、共和党支持者間では38%と、他国と比べて党派間での差が大きかった。中国が公正な貿易を行っていると考える割合は15%にとどまった。なお、米国の全輸入額に占める中国のシェアを尋ねた設問では、81%が中国からの輸入を過大に見積もっていた。中国が米国の輸入に占めるシェアは実際には15%程度だが、輸入の25%を占めると回答した割合が31%、50%を占めるとしたのは28%、75%を占めると回答したのは18%、95%を占めるも4%あった。

これら結果を踏まえ、今回の調査を主導したケイトー研究所通商政策センターのバイスプレジデントのスコット・リンシカム氏は、米国人は貿易に対する関心が低く、貿易の正しい仕組みを知らないため、共和党から大統領候補者として指名されたドナルド・トランプ前大統領が全ての国からの輸入に10%の関税を課す提案をしても、反発を受けないことは「驚くべきことではない」と指摘した(米通商専門誌「インサイドUSトレード」8月13日)。なお、今回の世論調査によると、「自身にとって重要な課題」に「グローバリゼーションと貿易」と回答した割合はわずか1%にとどまり、11月の大統領選挙の主要な争点にはならないと指摘されている。

(注)ケイトー研究所が調査内容を作成、調査会社のユーガブが調査を実施。18歳以上の米国人2,000人を対象に、2024年2月22~29日にオンラインで回答を収集。

(赤平大寿)

(米国)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください