米ケニア首脳の共同声明、ケニアが米国の同盟国に、新たな通商・環境イニシアチブ発足(米国、ケニア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月27日 14時15分
米国のジョー・バイデン大統領とケニアのウィリアム・ルト大統領は5月23日、共同声明を発表した。両国の外交樹立60周年を記念し、ルト大統領は国賓として首都ワシントンを訪れていた(注1)。共同声明では、ケニアを米国の非NATO同盟国にするバイデン大統領の意向が示され、バイデン大統領は同日、その意向を議会に通知した。
共同声明では、米国とケニアの関係をさらに強化するため、民主主義改革の推進、公衆衛生の保護、人的交流の拡大、気候変動対策の推進、貿易投資の促進、発展途上国の債務負担軽減、デジタルイノベーションの加速、グローバルな安全保障の強化などがうたわれた。
気候変動対策では、米国ケニア気候・クリーンエネルギー産業パートナーシップの発足を発表した。同パートナーシップを通じて両国はクリーンエネルギーの導入、クリーンエネルギー・サプライチェーン、グリーン産業化の3分野で優先的に協力する。具体的には、電気自動車(EV)のサプライチェーンやeモビリティー、炭素回収・貯蔵技術(CCS)、グリーン農産物加工、クリーン調理技術、グリーンデータセンターなど、温室効果ガス(GHG)排出が少ない製品や気候変動に配慮したサービスのための強靭(きょうじん)なバリューチェーンを発展させる。
貿易投資については、障壁を取り除き、商業機会の拡大を目指す新しい商業・投資パートナーシップ覚書を結ぶと明らかにした。両国は別途、米国ケニア戦略的貿易・投資パートナーシップ(STIP)を交渉しており(2024年5月22日記事参照)、これとは異なる新しい貿易投資の枠組みとなる(注2)。なお、STIPについてはあらためて、2024年内の合意を目指すことを表明した(注3)。アフリカ成長機会法(AGOA)については、米国とケニア、サブサハラ地域の貿易の土台だとし、2025年9月末の失効前に再承認されることを歓迎するとした(注4)。
イノベーション・デジタル分野では(注5)、人工知能(AI)を活用し、信頼できるデータの自由な流れを促進し、デジタル技術のスキルアップを加速させるために、4月に結んだAIに関するパートナーシップに基づき、両国間のAI戦略対話を設置する。また、米国はケニアを強靭な半導体サプライチェーンを構築するためのパートナーだとし、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)により創設された国際技術安全保障・イノベーション(ITSI)基金の下で、特に組み立て、試験、パッケージング分野で世界の半導体エコシステムを成長させ、多様化させる機会を探るとした。
(注1)共同声明の内容なども含むルト大統領の国賓訪問に関するファクトシートも発表されている。
(注2)米通商専門誌「インサイドUSトレード」(5月24日)によると、新しいパートナーシップは米通商代表部(USTR)の所掌ではないという。STIPはUSTRが所管している。なお、議会はケニアとの自由貿易協定(FTA)を望んでいる(上院財政委員会/下院歳入委員会)。
(注3)第6回交渉会合は6月3~7日にケニアで行われると発表されている。
(注4)現在、米連邦議会には、AGOAを2041年9月30日まで延長する法案が提出されている(2024年5月21日記事参照)。
(注5)デジタル分野では、カマラ・ハリス副大統領のデジタル・インクルージョンの推進に向けた官民のコミットメントも発表されている。
(赤平大寿)
(米国、ケニア)
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