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メキシコ工業団地協会、今後6年の工業団地開発の計画発表(メキシコ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月15日 0時20分

添付資料PDFファイル(175 KB)

メキシコ工業団地協会(AMPIP)は8月6日、「工業団地開発計画2024―2030」と題した報告書を発表し、民間デベロッパーによる今後6年間の工業団地開発計画とそれを実現するための提言を発表した。AMPIPは1986年に設立された業界団体で、4,000超の入居企業がある国内460カ所の工業団地を代表する。報告書では、米中の通商摩擦が続く中でメキシコにはニアショアリング(生産拠点を消費地の近隣国に移転すること)の追い風が吹いており、メキシコは今後の国際的な生産チェーンの中で機軸の1つになり得るとし、それを実現する適切な戦略を国として備えることが重要と提言している。同報告書は、クラウディア・シェインバウム次期大統領が民間部門に対する公約の中で、次期政権下で100の新たな工業団地を建設する意向を示したことに呼応し、民間部門としての計画を明らかにしたもの。

今後6年間で合計128の工業団地を建設する計画で、入居企業を含めた投資額は620~860億ドルに達し、31万3,000~41万8,000人の雇用を生み出す。128カ所の開発着手年別の計画は添付資料表1のとおりだが、72カ所が2024年中に着手される。72カ所の州別内訳は表2のとおり。米国向け輸出を視野に入れた北部(特にヌエボレオン州、コアウイラ州など北東部)への企業進出が続いているため、北部を中心に計画が多くなっている。

民間資本活用した電力インフラ整備と行政手続きデジタル化を提案

報告書では、メキシコがニアショアリングの追い風を生かし、企業誘致に成功するために、エネルギー、行政手続き、企業誘致活動の3分野でAMPIPの提言が行われている。

電力分野では、企業進出が続けば今後6年間で電力需要が3,000メガワット(MW)拡大するとし、安定した電力供給のために民間資本を導入するかたちで政府が送配電インフラの強化を進めるべきだと提言する。送配電事業は国の戦略的領域として、憲法で電力庁(CFE)の独占が定められているが、電力庁の資金不足もあり、送電線や変電所の建設が滞っている(注1)。ここ数年はCFEが必要なインフラを建設していないため、工業団地のデベロッパーや進出企業が費用を負担し、送電線の引き込みや変電所の建設を進めざるを得ない状況にある(注2)。この状況を打破するため、あらかじめ民間資本を参加させるかたちでインフラ整備を進めることを提案している。また、太陽光パネルなどを活用した分散型発電の上限(注3)について、現行の0.5MWから1MWに引き上げ、進出企業によるクリーンな自家発電を促進することを提言する。AMPIPは、今後建設される工場の屋根の50%を太陽光発電に利用することにより、合計で860MWの分散型発電が可能になるとしている。

行政手続きの分野では、連邦、州、市町村の全てのレベルの手続きをデジタル化して一元管理する単一窓口の創設、重要な企業の投資計画に対するフォロー体制の強化を挙げている。企業誘致分野では、新政権の国家地域開発・拠点再配置審議会の常任メンバーとしてAMPIPを加えることを提言する。

(注1)アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)政権下の5年間(2019年~2023年)のCFEによる送電網の建設は、エンリケ・ペニャ・ニエト前政権下6年分の3割にとどまり、現政権下2019~2023年の変電所の建設は、前政権下2014~2018年の6割弱にとどまる。

(注2)電力利用者に対する送配電料金の徴収は、憲法によってCFEしかできないため、工業団地デベロッパーなどの民間事業者は、配電インフラへの投資コストを回収する手段がなく、実質的には同インフラをCFEに寄付することとなる。回収できないコストは、入居者から徴収する工業団地の土地代や管理費などに加算されることが多い。

(注3)2014年8月に公布された電力産業法に基づき、メキシコで発電事業を行う事業者はエネルギー規制委員会(CRE)から許認可を得る必要がある。ただし、太陽光パネルなどを活用した分散型発電を促進するため、発電容量が0.5MW未満の場合は発電許認可は不要となり、CFEとの間で契約を締結することで事足りる(2022年11月21日記事参照)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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