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欧州委のCBAM担当責任者、移行期間の報告実績受けて、制度の検討状況説明(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月20日 0時10分

2023年10月から移行期間が開始しているEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、注)について、欧州委員会のCBAM担当部門の責任者は6月14日、在欧日系ビジネス協議会(JBCE)が日本企業向けに開催したセミナーで、本格適用に向けた制度設計の検討状況を説明した。

移行期間中の温室効果ガス(GHG)排出量の報告について、欧州委が定めたデフォルト値(既定値)を100%利用できるのは2024年7月末までとなっている。企業からは利用期限の延長を求める声が出ているが、担当責任者は、制度設計のために実際の排出量データを集める必要性があると強調した。対象製品の拡大も、制度の目標達成に必要だとした。一方、企業の負担軽減のため、適用除外となる少額貨物の基準値の見直しなどを検討していると説明した。

担当責任者によると、移行期間中のこれまでの2回の報告では、約95%がデフォルト値で報告され、大半が少額貨物だった。実際の排出量データの把握が容易ではないことは、各加盟国の管轄当局からも声が届いているとした。また、現段階で明言はできないが、移行期間中のデフォルト値の利用期限を延長するか、7月までに検討結果を出す予定とした。他方、電力以外の直接排出量は原則として、実際の排出量の算出を求めていると強調。本格適用後もデフォルト値の利用は可能だが、輸出国ごとにマークアップによる上乗せした値とすることで、実際の排出量の算出にインセンティブを付すとした。排出量のモニタリング体制が未確立の場合だけでなく、対応コストとの比較で企業自身がデフォルト値の利用を選択できるものだとした。デフォルト値の精緻化のため、移行期間中に実際の排出量データを収集する必要があると説明した。

一方の電力の間接・直接排出量では、各国で電力構成が異なり、企業の生産施設は直接電力網に接続されているケースは少ないことから、基本をデフォルト値とする。スマートグリッドや電力購入契約(PPA)などで把握可能な場合にのみ、実際の排出量データの利用を可能としていると説明した。

現状では、150ユーロ以下の少額貨物は適用除外されるが、CBAM規則で参照しているEU関税法典(UCC)の改正に伴い、少額貨物の定義がなくなる見込みと言及。適用除外の基準について、より高い基準額を新たに定めるか、重量ベースとするかなど検討しているとした。

企業の懸念が多い機密情報に関しては、域内の輸入事業者ではなく、域外の輸出事業者(生産者)が直接登録できるよう検討しているとした。また、輸入事業者がアクセス可能な情報の範囲も検討中とした。関係者の意見を聞きながら対応しており、移行期間中に調整したいとあらためて強調した。

(注)報告申請者は2024年1月末と4月末に既に2回の報告を終えた。CBAMの詳細はジェトロ調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」(2024年2月)を参照。

(薮中愛子)

(EU)

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