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欧州人民党のCBAM本格適用の延期提案に、欧州セメント、鉄鋼業界が反発(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月28日 1時10分

欧州議会の最大会派・欧州人民党(EPP、中道右派)が1月18日、2026年からの炭素国境調整メカニズム(CBAM、注)の本格適用を少なくとも2年延期するよう提言した(2025年1月23日記事参照)のに対し、対象製品の欧州の産業団体は反発している。

欧州セメント協会(CEMBUREAU)は1月21日、同業界の脱炭素化関連の大型投資実施には法的安定性と政策支援が必要で、CBAMは予定どおり本格適用を開始すべきだと主張した(プレスリリース)。同時に、不正・迂回行為リスクの低減やEUからの輸出に対する措置、制度の簡素化といった改善は必要との認識を示した。CBAMは欧州の事業者の行政手続きを増やすものではなく、増加する輸入品との公正な競争を担保するものだとして、先送りに反対した。

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は翌22日、近年の炭素価格の上昇や輸入品の増加を背景に、カーボンリーケージ(炭素漏出)の抑止や鉄鋼業界の脱炭素化推進に向け、CBAMは2026年から本格適用することが必要と訴えた(プレスリリース)。同時に、CEMBUREAUが指摘した迂回行為に対する規制強化やEUからの輸出品の競争力維持に加え、鉄鋼を用いた川下製品への適用拡大といった改善点を挙げた。

また、排出量の計算に係るデフォルト値を最大限厳しく設定することや、CBAM導入によるEU排出量取引制度(EU-ETS)の無償排出割当の段階的廃止について、本格適用前の2025年内に再調整する必要があると主張している。事業者の負担軽減に関連し、EU域内で生産し、域外で加工した製品をEUへ輸入する場合は報告義務を免除することや、少量貨物は金額ではなく重量に基づいて適用免除とすることも提言した。しかし、例えば、貨物サイズにかかわらず、広範の小規模事業者への適用免除といった過度な制度の簡素化は、CBAMの実効性を下げるとくぎを刺した。加えて、欧州鉄鋼産業の競争力強化を実現するためには、CBAMが「特効薬」ではなく、EUは通商、エネルギーといったあらゆる政策を動員して取り組むべきだと述べた。

(注)CBAMについては、ジェトロ「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」を参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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