国家気候変動政策2.0を発表、2050年までのネットゼロに弾み(マレーシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月4日 0時55分
マレーシアの天然資源・持続可能性省は9月30日、低炭素経済への移行に向けた新たな枠組み「国家気候変動政策(NCCP)2.0」を発表した。ニック・ナズミ天然資源・持続可能性相は、NCCP2.0が、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとするマレーシアの取り組みを再確認する位置づけにある、と説明した。NCCP2.0は、気候変動に関するマレーシアの政策を全て統括し、ガバナンス整備、低炭素開発、気候変動ファイナンス活用といった、低炭素経済への明確な道筋を示す包括的な政策。2025年初めにも完成を目指すマレーシア気候変動法の土台ともなるという。なお、国家気候変動政策の初版は、2009年にナジブ政権下で発表されていた(ジェトロ「マレーシアの脱炭素関連政策とその概要」)。
NCCP2.0は、「気候変動目標の達成」「気候変動対策の主流化」「実施手段の促進」「リスクに基づく計画実施」を目的の4本柱に据え、これらを実現するための5つの戦略的推進源、8つの触媒的取り組み、15の戦略、92の基幹行動を設定。達成に向けた要素(イネーブラー)として、人的資本、資金調達と投資、技術とインフラ、CEPA(注)の4つを指定した。
ニック氏はNCCP2.0の発表に当たり、「気候変動に対する強靭(きょうじん)性と能力を構築するための包括的なアプローチを取り入れ、将来の発展を脅かす予想外の課題に備える必要がある」「世界の温室効果ガス排出量に占めるマレーシアの割合は0.8%にとどまるが、地球の一員として、全世界で取り組まなければならない」との認識を示した。
同氏は、11月11日から開催される国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で、新共同定量化目標(NCQG)、炭素市場メカニズムに関するパリ協定第6条の実施、適応に関する世界全体の目標(GGA)、損失と損害に関する基金の運用化などの交渉に参加する。同氏はまた、「ASEANによる地域協力を主な柱に、ファイナンス、適応、損失と損害のメカニズムに対してバランスのとれたアプローチを提唱したい」とも述べ、2025年にASEAN議長国を務めるマレーシアにとって、国境を越えた協力の推進こそが優先事項だとした。
(注)広報(Communication)、教育(Education)、普及啓発(Public Awareness)の略で、持続可能な資源利用の在り方を次世代に伝えるための広報を総じて指す概念。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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