行政長官の施政報告、新成長分野の促進と経済活性化に向けた取り組み(香港、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月31日 0時55分
香港特別行政区政府(以下、香港政府)の李家超(ジョン・リー)行政長官は10月16日、就任後3回目となる施政報告(施政方針演説、以下、報告)を行った(2024年10月24日記事、2024年10月25日記事参照)。
報告では、主に「繁栄実現に向けた改革と変化の受容」「『一国二制度』の着実な実施とガバナンス体制の強化」「国際金融・海運・貿易センターとしての地位の確固・強化」「現地に合わせた『新たな質の生産力(注1)』の開発」「国際人材ハブへ」「成長エンジンとしての北部都会区の推進、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の連携深化」についての演説が行われた。
李行政長官は、「繁栄実現に向けた改革と変化の受容」では、中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議で採択された「改革のさらなる全面深化と中国式現代化の推進に関する決定」において、香港は「一国二制度」の強みを十分に活用し、国際金融、海運、貿易の中心地としての地位を強化・向上させ、人材のハブとなり、対外開放の役割を発揮し、粤港澳大湾区内での協力を深める立場を期待されていると述べた。
「『一国二制度』の着実な実施とガバナンス体制の強化」では、教育・科学技術・人材委員会、低空経済(注2)、観光ホットスポットの開発、シルバー経済(高齢者に重点を置いた経済活動)については分野横断的に政策間の調整を進めると示した。また、重要インフラ業者に対し、コンピュータシステムを保護し、サイバーセキュリティーの課題に対する耐久性を強化するため、2024年内に関連法案を提出する予定と示した。
「国際金融・海運・貿易センターとしての地位の確固・強化」では、国際的なコモディティ取引センターとしての地位強化、投資促進を目的とした投資移民制度「新資本投資参入者スキーム」において、5,000万香港ドル(約9億5,000万円、1香港ドル=約19円)以上の物件であれば住宅用不動産も投資対象として許可するとし、従来の条件を緩和した。
「現地に合わせた『新たな質の生産力』の開発」では、国際的な科学技術センターとして、研究費の増額、投資拡大を行う、生命・健康技術、人工知能(AI)・ロボット、半導体・スマートデバイス、先端材料、新エネルギー分野に100億香港ドルのファンド・オブ・ファンズを設立する。また、低空経済発展のため、ドローンを活用した配送、調査、ビルメンテナンス、空撮、救助などへの応用や関連規制の改正、中国本土間との飛行ルートの共同開設や出入国・関税手配の促進を行う。
「国際人材ハブへ」では、「トップタレント・パススキーム」の対象大学に13校を追加して198大学に拡大、同スキームの最初のビザ期間を2年から3年間に延長する。
「成長エンジンとしての北部都会区の推進、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の連携深化」では、粤港澳大湾区の個人情報の越境流通に関する標準契約を全ての分野に拡大し、粤港澳大湾区での医療協力を拡大する(添付資料表参照)。
施政報告の詳細は香港政府のウェブサイトで確認できる。
(注1)中国中央電視台(CCTV)の解説では、技術の革命的なブレークスルー、生産要素のイノベーティブな配置、産業の深い転換・レベルアップにより生み出される先進生産力とされる。2023年9月11日の人民網日本語版では「従来型の生産力とは異なり、新たな分野に及び、技術水準が高いもので、イノベーション主導であることがそのカギとなる」とされている。
(注2)空飛ぶクルマやドローンなどの手段を用いて、低空飛行による乗客・貨物輸送を事業化し、社会変革をもたらす活動を指す。
(松浦広子)
(香港、中国)
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