AI向け半導体の輸出管理強化に米産業界は反発(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月14日 11時35分
米国産業安全保障局(BIS)が1月13日に発表した人工知能(AI)向け半導体などへの輸出管理を強化する暫定最終規則(IFR)に対して(2025年1月14日記事参照)、米国の産業界が反発しており、トランプ次期政権下での規制撤回を求める声も上がっている。
米国半導体工業会(SIA)は、IFRが発表された1月13日、「大統領の交代を数日後に控えたこの時期に、業界の有意義な意見を一切聞かずに、これほど大規模かつ影響力のある政策転換が急きょ決定されたことに、われわれは深く失望している。この新しい規則は、戦略市場を競合他社に譲り渡すことで、意図せぬかたちで半導体やAI分野の米国の経済と国際競争力に永続的なダメージを与えるリスクがある」との声明を発表した。SIAは2022年10月に発表された先端半導体に対する輸出管理強化についても、産業界の意見が取り入れられずに策定されたと批判している(2022年11月7日記事参照)。
情報技術産業協議会(ITI)も同日、「関係者との十分な協議を経ずに、影響が大きく複雑な規則を急いで完成させることは、バイデン政権が強化に努めてきた米国の競争力やグローバルな同盟関係への影響をほとんど考慮しないことになる。われわれは、トランプ=バンス次期政権がこの規則を撤回し、産業界と協議することを強く求める」との声明を発表した
一方で、こうした産業界の主張とは反対に、商務省のジーナ・レモンド長官は「完璧な規則などない」「これらの例外が明確に示しているように、われわれは苦心しながら、産業界や市民社会、専門家、連邦議会と協議を重ね、AIを世界中に普及させ、他国を米国(の基準)に近づけるという2つの目標を達成しながら、同時に、国家安全保障上のリスクから自国を守り、米国企業と非米国企業の高いセキュリティー基準の順守を確実にしている」と述べている。また、IFRに対して120日間のパブリックコメントを設けたことについて「非常に長い」と述べた(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」1月13日)。
2024年の大統領選挙後に、ITIを含めた幾つかの産業団体はトランプ次期政権下での規制緩和に期待する声明を発表している(2024年11月8日記事参照)。今回のIFRに対するパブリックコメントは5月末に締め切られ、トランプ次期政権下で最終規則が策定されることになる。こうした産業界の期待と国家安全保障の確立の間で、次期政権がどのような判断をするか、今後の動向が注目される。
(赤平大寿)
(米国)
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