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米議会予算局、財政の中期見通し改定、学生ローン免除や移民増加などの影響を定量化(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月24日 13時10分

添付資料PDFファイル(250 KB)

米国議会予算局(CBO)は6月18日、2024年から2034年までの財政見通しの改定版を発表した(添付資料表参照)。2024年2月に発表した見通し(2024年2月14日記事参照)の改定となる。

2024年の財政赤字(注)は1兆9,900億ドルと、2月時点の見通し(1兆5,820億ドル)から大きく拡大した。CBOによると、赤字幅拡大の主な要因は、(1)学生ローン免除の拡大(2024年5月24日記事参照)に伴う負担増、(2)2023年と2024年の地方銀行破綻に伴う支出回収の遅れ、(3)メディケイドの支出が予想を上回ったことに伴う増加などという。2025年以降の財政赤字も拡大見込みで、2034年時点の累積債務残高は50兆6,640億ドルと、2月時点の見通し(48兆3,000億ドル)よりも2兆3,640億ドル拡大する。

なお、今回の試算には、11月の大統領選挙に向けた両候補者の政策や2025年予算教書の影響は盛り込まれていない。ジョー・バイデン大統領、ドナルド・トランプ前大統領ともに、2025年末で期限を迎えるトランプ減税の一部または全部延長を唱えているが、CBOが5月に発表した試算では、全部延長の場合に、約4兆6,000億ドルもの追加的な財政負担が発生するとされている。大企業・富裕層向け増税や関税引き上げなど歳入増につながる施策が十分に実施できない場合には、今回の見通しよりも大幅に財政が悪化することとなり、今後の行方が注目される。

今回の見通しでは、移民の流入増が財政に与える影響についての試算も併せて発表した。2021~2026年の期間に当初予想よりも870万人多い移民の流入を見込み、これによる財政への影響を定量的に示したかたちだ。試算では、2024~2034年の変化として、(1)歳出面では医療費負担適正化法(オバマケア)に基づく保険料の税額控除や児童税額控除、メディケイドや子ども向け健康保険プログラムなどによる支出が増加する結果、2,780億ドル増加、(2)歳入面では、所得税や給与税収が増加する結果、1兆2,000億ドル増加すると見込み、財政赤字は8,970億ドル減少し、さらに、米国経済では名目GDPを8兆9,000億ドル分押し上げるとしている。

移民問題が大統領選の最大の争点の1つとなる中、今回の試算は米国の経済・財政での移民の役割に関して、一石を投じるものとなりそうだ。

(注)支払い日に関するテクニカルな影響を除いた数値。

(加藤翔一)

(米国)

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