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現地企業に聞く、オーストラリアのグリーン水素の取り組みと課題(オーストラリア)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月16日 11時55分

オーストラリア産業ガス大手のBOC(注1)は、オーストラリア国内で様々なグリーン水素のプロジェクトを手掛けている。このたび、ジェトロはBOCのクリーンエネルギー担当のビジネス開発マネージャーのクリス・ドルマン氏に、同社が取り組む水素生産プロジェクトの計画や現地の課題について聞いた(最終確認日:2025年1月15日)。概要は次のとおり。

BOCは、同社の強みとして、オーストラリア国内で80年以上にわたり水素を供給するビジネスを展開していることを挙げた。また、親会社のリンデは世界各地で大規模な水素製造プロジェクトを展開しており(水素ステーションを含む)、こうしたリンデの水素サプライチェーンの専門知識と技術を活用することできる、と説明した。

BOCはニューサウスウェールズ(NSW)州では、シドニーから南に約100キロの位置にあるイラワラ地域のウーロンゴン市でグリーン水素プロジェクト「イラワラ水素テクノロジーハブ(注2)」に取り組む。現在、プロジェクトの基本設計(FEED)を進めており、2026年の操業開始を目指している。国内ではほかに、クイーンズランド州、タスマニア州、南オーストラリア州において、モビリティと発電に関わるグリーン水素プロジェクトを開発している。ドルマン氏は、BOCは日本企業との連携には常にオープンだと述べた。

ドルマン氏はオーストラリアのグリーン水素に関する今後の課題として、グリーン水素の生産に必要な再生可能エネルギー電力のコストを下げる必要があると指摘した。加えて、もう1つ重要な課題として、電解槽のコストを挙げた。こうした状況を踏まえ、グリーン水素に携わる産業側においては、グリーン水素のコスト削減につながるような製品開発や生産効率の向上など企業努力を行う役割を担っていく必要がある、と指摘した。それと同時に、早期から水素プロジェクトに参入する企業が最終的な投資決定の判断に自信を持てるよう、政府側は政策とインセンティブを適切に組み合わせていく必要がある、と述べた。また、政府がグリーン水素普及のために公共交通機関でグリーン水素を積極的に活用するなど、グリーン水素プロジェクトの初期需要を生み出す役割も求められるだろうと説明した。

(注1)BOCは、アイルランドの産業ガス大手リンデのオーストラリア現地法人。

(注2)ニューサウスウェールズ州政府は州内の大型水素プロジェクト3件に対して、「水素ハブイニシアティブ(Hydrogen Hub Initiative)」を通じて助成を行っているが、イラワラ地域のプロジェクトは3件の1つとして選ばれ、州政府から2023年3月に2,850万オーストラリア・ドル(約28億7,850万円、豪ドル、1豪ドル=約101円)の助成が決定している。同プロジェクトで、BOCは製造した水素を、水素燃料電池トラック・バス向けや同社の既存顧客に供給するほか、敷地内に最大5基の水素燃料電池ステーション(トラック・バス用)も設置する予定だ。フェーズ1では10.5メガワット(MW)規模の電解槽で1日当たり4トンのグリーン水素を製造する計画。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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