米ケニア戦略的貿易・投資パートナーシップの第5回交渉会合、年内合意を再確認(米国、ケニア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月22日 14時0分
米国通商代表部(USTR)は5月17日、「米国ケニア戦略的貿易・投資パートナーシップ(STIP)」の第5回交渉会合を終え、共同声明を発表した。第5回交渉会合は5月13~17日に首都ワシントンで行われた。前回の交渉会合は4月に同じく首都ワシントンで行われた(2024年4月17日記事参照)。
共同声明によると、USTRのキャサリン・タイ代表と、ケニアのレベッカ・ミアノ投資・貿易・産業長官は高水準で野心的なSTIPについて、2024年内の合意に向けて取り組むとするコミットメントを再確認した。また、両国は反腐敗、零細・中小企業、サービスの国内規制、農業(1回目、注1)などの条文で大きな進展があったことで合意した。これら条文の要約は2023年5月に公開されている(2024年4月9日記事参照)。
両国はまた、投資の拡大や、持続可能で包摂的な経済成長の促進、労働者の利益、アフリカ地域経済統合の支援などでも、交渉を継続することで合意した。これらは、効率的な税関手続きと執行協力強化、労働者の権利と保護の促進、環境と気候変動目標の推進・支援、市民・貿易業者・その他の利害関係者への規制プロセスに関するより高い透明性の提供、農産品貿易を促進し、科学とリスクに基づく衛生植物検疫措置と持続可能な農業慣行の適用に関する透明性と理解の強化を目的としている。
なお、USTRは今回の交渉会合中の5月16日に、ステークホルダー向け説明会を開催した。バイデン政権は、ケニアとのSTIPを含めて現在交渉している通商協定は市場アクセス交渉が含まれていないことなどから、議会承認を必要としない行政取り決めとの立場を取っている。一方で連邦議会は、合衆国憲法は諸外国との通商を規制する権限を議会に与えていることから、党派を問わずにバイデン政権の姿勢に反発している。今回の説明会の実施は、こうした批判に対して、議会への説明責任を果たしているとする政権の取り組みの一環とみられる。なお、連邦議会で通商を所管する上院財政員会のロン・ワイデン委員長(民主党、オレゴン州)と下院歳入委員会のリチャード・ニール少数党筆頭理事(民主党、マサチューセッツ州)は5月21日、ケニアは世界で最も急速に発展する市場の1つで、サブサハラ地域の市場へ参入する拠点となることから、STIPではなく、市場アクセスも含めた自由貿易協定(FTA)の交渉をするよう、USTRのタイ代表に書簡を送っている(注2)。
商務省は今回の交渉会合中の5月15日に、ケニアがアフリカのデジタルトランスフォーメーション(DX)のリーダーとするジーナ・レモンド長官の声明を発表した。レモンド長官は4月末に、アフリカビジネスに関する大統領諮問委員会(PAC-DBIA)を率いてナイロビを訪問し、人工知能(AI)の活用、データフローの円滑化、デジタルスキルの強化に関する共同声明を発表していた。同省によると、AIの安全で責任ある開発と普及を促進するためのパートナー国などとの協力で、アフリカではケニアが初となる。ケニアを中心にアフリカとの経済関係強化を進める政権の姿勢がうかがえる。
(注1)農業は2023年5月と2024年4月の2回に分けて、条文の要約が公開されている。
(注2)バイデン政権は、関税の引き下げに基づいて通商政策を定義するのは誤りとし、市場アクセスを含まない「現代の通商協定」を推進する方針を示している(2024年2月9日付地域・分析レポート参照)。
(赤平大寿)
(米国、ケニア)
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