「マダニ経済政策」の目標達成に力点、2025年国家予算公聴会を開催(マレーシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月16日 1時20分
マレーシア財務省は7月9日、2025年国家予算編成にかかる公聴会をプトラジャヤの同省庁舎で行った。アンワル・イブラヒム首相兼財務相は冒頭のあいさつで、予算案のテーマは「国民の幸福のための繁栄した国家」と発表し、「マダニ(MADANI)経済政策」(2023年8月2日記事参照)で設定した目標の達成に引き続き注力する考えを明らかにした。MADANIは「持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやり」のマレー語の頭文字から付けた現政権の政策理念だ。
アンワル首相によると、マダニ経済政策は、国が直面する構造的問題に対処するための基盤で、具体的成果も出ている。例えば、マレーシア証券取引所の株式時価総額が5月に初めて2兆リンギ(約68兆円、1リンギ=約34円)に到達したことや、2024年第1四半期(1~3月)の実質GDPが前年同期比4.2%増、輸出が5.2%増と、いずれも前期から改善したことなどを挙げた。アンワル首相は、力強い経済成長を促進するには、引き続き「天井の引き上げと底上げの構造改革」が必要だと強調した。天井の引き上げとは、マレーシアをアジア経済のリーダーにする取り組みで、BRICSやOECDへの参加表明もその一部と説明した。底上げに関しては、貧困層に配慮しながら国民の生活の質を向上させ、質の高い包括的な収入機会を創出する必要性があると述べた。昨今の生活費高騰を政府としても認識しており、カルテルや汚職、資金漏出の排除により、利益を国民に還元できるよう努めると強調した。
幅広い業界から切実な要請
公聴会の次第によると、約240の省庁、公的団体、商工会、業界団体が招待を受けており、会場には400人程度が参加。それぞれの代表者が1時間半にわたり、政府への要望や質問を投げかけた。
マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティアン・ライ会頭は、人工知能(AI)やロボットシステムへの支出に対する中小企業への免税措置や、公立大学の1つをAIやインダストリー4.0専門大学に転換することを提案した。外国商工会議所として唯一発言したマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)は、製造業分野の人材不足を訴えたのに加え、追って発表される最低賃金の引き上げについて、少なくとも6カ月の準備期間を与えるよう要請した。
このほかにも、グリーン製品製造に対するインセンティブや、SDGs(持続可能な開発目標)、AI関連の研究開発に対する税制優遇や助成金、物品・サービス税(GST)の再導入、飲食サービスに対する売上・サービス税(SST)の引き下げ、希少疾患患者への支援など、さまざまな分野で予算案への編成を望む声が上がった。
アンワル首相は全ての発言を聞いた後、「提起されたあらゆる問題について、関係省庁とよく協議する」「汚職を回避する改革を優先的に行う」と述べた。財務省はウェブサイト上でも予算案に対する意見を聴取している。なお、2025年国家予算案は10月18日に発表される予定だ。
アンワル首相(中央)のほか、アミル・ハムザ・アジザン第2財務相(左から2人目)やアブドゥル・ラシード・ガフォール中央銀行総裁(一番右)も出席(ジェトロ撮影)
参加者に語りかけるアンワル首相(ジェトロ撮影)
(ニサ・モハマド、吾郷伊都子)
(マレーシア)
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