米連邦下院選も共和党が勝利、大統領、上下両院ともに共和党が制する「トライフェクタ」に(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月14日 11時40分
米国で11月5日に投開票が行われた連邦議会下院選挙において、共和党が過半数の議席を獲得し、多数党の座を確実とした。上院も同様で、2025年1月から始まる第119議会は、上下両院ともに共和党が多数党となる。
CNNによると、全435議席ある下院で、共和党が過半となる218議席を獲得した(11月13日時点)。上院は、既に共和党が52議席を獲得しており、大統領選挙も共和党のドナルド・トランプ前大統領が勝利したため(2024年11月7日記事参照)、大統領職と上下両院の多数党を同一の政党が担う「トライフェクタ」が実現する。米国では、外交政策などは大統領権限でできることが多いとされているが、予算や通商の大部分(注1)は議会承認を経る必要があることから、大統領の政策の実現可能性を占うには議会構成も重要となる。バイデン政権は、インフラ投資雇用法(IIJA、2023年11月16日記事参照)、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法、2022年8月26日記事参照)、インフレ削減法(IRA、2024年8月19日記事参照)といった大型の経済政策は、いずれも民主党のトライフェクタだった、前半2年間に成立させた。しかし、2022年11月の中間選挙で共和党が下院で多数党になり、ねじれ議会になって以降(2022年11月17日記事参照)、大型の経済政策は成立できなかった。今回、共和党のトライフェクタが実現することで、トランプ氏の政策実現に向けたハードルは低くなった。さらに、バイデン政権が制定した規則を連邦議会による承認の下で失効させられる議会審査法(CRA)の行使も視野に入る。CRAは、政権交代が起こった際に活用されることが多く、これまで最もCRAが行使されたのは、共和党のトライフェクタだった2017年からのトランプ政権下だった(2024年5月30日付地域・分析レポート参照)。
ただし、議席数は僅差の見込みだ。下院では、民主党が208議席を確実にしており、現時点までに確定した議席数で比較すると共和党との差は10議席にとどまる。トランプ氏は、閣僚など政権の要職人事の発表を続けており、その中には、国連大使に指名されたエリス・ステファニク連邦下院議員(ニューヨーク州、共和党、 2024年11月13日記事参照)や、司法長官に指名されたマット・ゲーツ下院議員(共和党、フロリダ州、2024年11月14日記事参照)ら現役の下院議員も含まれる。政権の役職に就けば、議員を辞職しなければならず、後任を決めるには数カ月かかるとされる(議会専門紙「ザ・ヒル」11月12日、注2)。そこで民主党候補が後任となれば両党の議席差はさらに縮まるため、今後、結果未定の残り9議席の行方が注目される。
なお、上院共和党は11月13日に、院内総務にジョン・スーン議員(サウスダコタ州)を選出した。これまで18年間にわたり、共和党院内総務を務めていたミッチ・マコーネル議員(ケンタッキー州)を引き継ぐ。マコーネル議員は2月に院内総務を退任する意向を発表していた。
(注1)通商は憲法上、議会の専権事項だが、国際緊急経済権限法(IEEPA)などの過去に成立した法律によって、関税賦課の権限の一部が大統領に移譲されている。ただし、関税を賦課する範囲や大統領が発動できる条件など、大統領にどの程度の権限が委譲されているかについては、解釈が分かれている(2024年10月15日記事参照)。
(注2)補欠選挙の実施は、州によってルールが異なる。なお、ゲーツ議員は司法長官候補の指名を受けて11月13日に議員辞職を表明した。
(赤平大寿)
(米国)
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