カナダとメキシコへの追加関税、新車1台当たり3,000ドル増となる試算も(米国、メキシコ、カナダ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年2月4日 14時0分
米国のドナルド・トランプ大統領が2月1日に発表した、カナダとメキシコに25%、中国に10%の追加関税を賦課する新たな大統領令に関し、2月3日に、3月まで一時停止することが明らかになった(2025年2月4日記事参照)。こうした動きに対し、自動車業界団体などがコメントを発表している(2025年2月4日記事参照)。
海外ブランドの販売店からなる米国国際自動車ディーラー協会(AIADA)のコーディ・ラスク最高経営責任者(CEO)は「米国、カナダ、メキシコ間の貿易は、米国の国際的な自動車販売業者にとって極めて重要だ。米国の海外ブランドディーラーにおける56万人以上の米国人の雇用と480億ドルの給与、部品とサービスでの年間710億ドルの売り上げが危険にさらされている。25%の関税は米国の消費者にも痛手となり、平均的な自動車販売価格が数千ドルも上昇する」と関税賦課に反対の姿勢を示す声明を発表した。全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長は「数十年にわたる労働者に不利な貿易政策を撤回するための良い一歩として、米国の製造業の雇用を守るための積極的な関税措置を支持している」とした上で、「(しかし)われわれが直面している国家的緊急事態は麻薬や移民の問題ではない。米国企業が海外の労働者と国内の消費者を搾取してウォール街で巨額の報酬を得ている間に、何世代にもわたって取り残されてきた労働者階級の問題だ。われわれは工場の閉鎖を止め、米国の雇用を取り戻し、世界的な底辺への競争を直ちに止める必要がある」と述べ、交渉のツールとしてではなく、労働者の利益のための関税に取り組むべきだと主張した。
また、ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタ自動車が加盟する自動車イノベーション協会のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「(国をまたぐ)シームレスな自動車貿易は、北米において3,000億ドルの経済価値を生んでおり、米国の世界的な競争力を維持するだけでなく、自動車業界における国内の雇用、車両の選択肢や手頃な価格を支えている」と貿易の重要性を強調したものの、「われわれは、大統領の目標を達成し、米国の健全で競争力のある自動車業界を維持する解決策について、政権と協力することを楽しみにしている」と慎重な発言にとどまった(オートモーティブニュース2月2日)。
米国調査会社のウォルフェ・リサーチ(ニューヨーク州)は、メキシコとカナダに対する追加関税により、米国での平均車両価格は1台当たり3,000ドル上昇すると試算している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版2024年11月26日)。米国自動車情報のコックスオートモーティブによると、2024年12月時点での米国における平均販売価格は約5万ドルで、過去最も高い水準に達している。なお、オートモーティブニュース・データセンターによると、2024年のメーカー別の生産台数は、メキシコでGMが84万台で首位、次いで日産が54万台、カナダではトヨタが53万台で首位、次いでホンダが42万台となった。
(大原典子)
(米国、メキシコ、カナダ)
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