COP29議長国アゼルバイジャン、気候資金の新目標額決定を評価(アゼルバイジャン、世界)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月26日 11時0分
アゼルバイジャンは、国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29、2024年11月12日記事参照)の議長国を務めた。途上国の気候変動対策を支援する資金「気候資金」の新たな目標額の決定という難しい課題に向けて、議長を務めた同国のムフタル・ババエフ環境・天然資源相をはじめとする関係者が会議をまとめようと努力した一方、イルハム・アリエフ大統領の演説での欧米批判が分断をあおっているとの批判を浴びた。
アリエフ大統領は12日の首脳級会合で開幕のあいさつをし、前半でアゼルバイジャンの再生可能エネルギー移行の取り組みを紹介した。同国の再エネ潜在力は陸上で135ギガワット(GW)、洋上で157GWと推定されているとし、アラブ首長国連邦(UAE)のマスダール、サウジアラビアのアクワパワーなどとの間で実施しているプロジェクトに言及して、2030年までに合計発電容量約6GWの太陽光、風力、水力発電所を建設する計画だと述べた。黒海とカスピ海の海底ケーブルを経由したグリーンエネルギーの欧州向け輸出プロジェクト(2024年11月20日記事参照)にも言及した。
アゼルバイジャン政府は、パリ協定に基づいて温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに1990年比35%、2050年までに同40%削減するという目標を設定している。さらに、再生可能エネルギーの割合を2030年までに発電容量の30%に増やす計画だ。
アリエフ大統領はあいさつの後半で、石油と天然ガスは「神からの贈り物」とする持論を展開し、欧米の一部からの産油国非難に苦言を呈した。また、2022年7月にEUと署名した同国からEUへの天然ガス供給量拡大に関する覚書(2022年7月20日記事参照)に言及し、化石燃料に依存しつつアゼルバイジャンを非難するのは二重基準だと批判した。同大統領は島しょ国支援のセッションでも演説し、島しょ国の気候変動問題は旧宗主国による新植民地主義の結果だとして、フランスとオランダを名指しで非難した。
COP29は最終日の11月22日までに気候資金で合意に至らず、会期を延長して24日に閉幕した。2035年までの新たな目標額を年間3,000億ドルとし、2035年までに官民合わせて少なくとも年1兆3,000万ドルに拡大することで合意した。ババエフ議長は現行の3倍の目標額を確保したことを「われわれが達成できる最良の合意」と評価し、世界の金融構造を変えて「1.5度目標」(注)に向けた大きな一歩を踏み出したと述べた。
アリエフ大統領が12日の開幕あいさつで述べたところによると、COP29には196カ国から、80人の大統領、副大統領、首相級を含む7万2,000人の参加登録があったという。
COP29に関する情報はジェトロのビジネス短信特集「COP29に係る各国の反応」も参照。
(注)パリ協定で示した目標。産業革命前と比べて、世界の平均気温の上昇を2度以下に、できる限り1.5度に抑えることを目指す。
(小林圭子)
(アゼルバイジャン、世界)
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