米大統領選、共和党トランプ氏の勝利確実、関税など通商政策の先行き注視する声も(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月7日 10時20分
米国大統領選挙の投開票が11月5日に行われ、共和党のドナルド・トランプ前大統領の勝利が確実となった。これに伴い、米国では新たな関税政策の導入や、自由貿易協定(FTA)非締結国向けに液化天然ガス(LNG)の輸出が再開されるといった報道がされている。
AP通信(米東部時間11月6日午後7時)によると、トランプ氏が獲得した選挙人は295人で過半の270を超えた。激戦州のうち、ペンシルベニア州の結果がトランプ氏勝利の決定打となった。民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の獲得数は226人となっている。ハリス氏は6日午後、トランプ氏に勝利を祝う電話をし、夕方に支持者に向けて演説をした。なお、激戦州のアリゾナ州とネバダ州のほか、アラスカ州ではいまだ結果が確定していない。
事実上の選挙公約となる共和党の政策綱領には、全世界からの輸入に一律10~20%の関税を課すベースライン関税の導入などがうたわれている(注1)。投票日前から、トランプ氏本人に加え、トランプ政権下で通商代表部(USTR)の代表を務め、次期トランプ政権でも主要閣僚を務めると目されるロバート・ライトハイザー氏が、新たな関税導入に議会承認は必要ないとの見解を示しており(注2)、米通商専門誌「インサイドUSトレード」(11月6日)や政治専門紙「ポリティコ」(11月6日)などは、中国に対するさらなる関税率の引き上げを含め、何らかの新しい関税が導入される見込みが高いと指摘している。ジェトロによる在米日系製造企業へのヒアリングによると、一律に10%超の関税を課すベースライン関税や、対中規制が拡大して中国製部品を利用したメキシコからの輸入に高い関税が課されると、ビジネスへの影響が大きくなると述べる企業が多い。そのほか、バイデン現政権が一時停止していた非FTA締結国へのLNG輸出認可(2024年9月5日記事参照)が全面的に再開される可能性なども指摘されている(ブルームバーグ11月6日)。
同時に行われた連邦議会選挙については、上院は非改選の議席も含め、共和党が全100議席中52議席の獲得を確実にした。共和党がウェストバージニア州、オハイオ州、モンタナ州で民主党から議席を奪還し、4年ぶりに上院で多数党となる。435の全議席が改選となった下院は、共和党が205議席、民主党が190議席を確実にしているが、まだ40議席の結果が確定しておらず、どちらが多数党になるかは確定していない。関税など一部の政策を除き、法律の制定や予算措置を伴う政策を実行するには議会承認が必要となるため、大統領の政策実行可能性を占うには、議会構成も重要となる。
ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙結果と各国・地域の反応」では、大統領選の結果状況と各国の反応に関する最新動向を随時紹介している。
(注1)共和党の政策綱領を基にしたトランプ氏の政策分析は、2024年8月9日付地域・分析レポート参照。
(注2)通商は憲法上、議会の専権事項だが、国際緊急経済権限法(IEEPA)などの過去に成立した法律によって、関税賦課の権限の一部が大統領に移譲されている。ただし、関税を賦課する範囲や大統領が発動できる条件など、大統領にどの程度の権限が委譲されているかについては、解釈が分かれている(2024年10月15日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国)
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