4月の米小売売上高は前月比横ばい、ガソリン価格上昇が寄与、消費者は引き締め姿勢に(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月17日 13時50分
米国商務省の速報(5月15日付)によると、4月の小売売上高(季節調整値)は前月比横ばいの7,052億ドル(添付資料表参照)で、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.4%増)を大幅に下回った。なお、2月の売上高は、前月比0.9%増から0.7%増に、3月は同0.7%増(速報値、2024年4月16日記事参照)から0.6%増にそれぞれ下方修正された。
無店舗小売り、自動車・同部品、総合小売り、ヘルスケアなどが押し下げ要因に
業種別にみると、無店舗小売りが前月比1.2%減の1,193億ドル(寄与度:マイナス0.21ポイント)と全体を最も押し下げた。次いで、自動車・同部品が0.8%減の1,323億ドル(マイナス0.14ポイント)、総合小売りが0.3%減の759億ドル(マイナス0.04ポイント)、ヘルスケアも0.6%減の360億ドル(マイナス0.03ポイント)と減少に寄与した。一方、ガソリンスタンドは3.1%増の562億ドル(プラス0.24ポイント)と増加した。
今回の結果については、物価変動も比較的大きく寄与していると考えられる。消費者物価指数(CPI)を前月比で見た場合、ガソリンは3カ月連続のプラスで、4月は2.8%増と比較的大きな伸び幅を示した。一方、自動車は新車が3カ月連続マイナスとなり、4月も0.4%減だった(2024年5月16日記事参照)。これらが関連分野の店舗売り上げの増減に寄与したもようだ。
物価要因以外にも、前月の特殊要因の反動もありそうだ。ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミストのティム・クインラン氏は、イースター休暇が例年より早かったことや、アマゾンのセールイベントが3月に実施されたことが同月の売り上げを押し上げた可能性が高く、これらの単発的な出来事によって4月の売り上げ減少が誇張されたと指摘している(ヤフーファイナンス5月15日)。
さらに、消費の減速を示唆していると捉える向きもある。キャピタル・エコノミクスの副主任エコノミストのマイケル・ピアース氏は「金利上昇が金利に敏感な消費に重くのしかかり、労働市場が冷え込むにつれて、個人消費は減速している」と述べた(AP通信5月15日)。前月時点でインフレと貯蓄の減少により、裁量的支出が軟調になる可能性が指摘されており(2024年3月18日記事参照)、こうした兆候は続いているもようだ。節約志向を強める消費者は割引やプロモーションに引き寄せられる傾向が続いており、衣料品などの裁量的支出に関しては低価格商品の販売が伸びている。アドビによると、オンラインで最も安い価格帯のアパレルの売り上げシェアは、2019年4月の36%から2024年同月に53%へ拡大した。一方、最も高い価格帯のアパレルの市場シェアは半分以下に落ち込み、同時期にわずか9%のシェアにとどまった。
長引くインフレの影響は消費者マインドにも影響を与えている。民間調査会社コンファレンスボードが4月30日に発表した4月の消費者信頼感指数は97.0と、3月の103.1より6.1ポイント減少し、2022年7月(95.3)以来の低水準に落ち込んだ(添付資料図参照)。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は142.9(3月:146.8)で3.9ポイント減少と、2023年11月(136.5)以来の低水準となった。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は66.4(3月:74.0)で7.6ポイント減少し、景気後退リスクの高まりを示唆するベンチマークとなる80の水準を3カ月連続で下回った。
同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は「4月の回答によると、消費者の懸念事項は物価の高騰、特に食品やガソリン価格の高騰が上位を占め、政治情勢と世界的な紛争が次点だった」と述べた。今後6カ月間の支出計画に関して、節約をするためにどのような支出を削減するかを消費者に尋ねたところ、外食が44.8%と半数近くに上った。また、衣料品・服飾雑貨(31.5%)や屋外での娯楽(30.7%)、旅行(23.3%)など、裁量的支出が上位を占めており、消費者が引き締めに転じている傾向が強まっている。
(樫葉さくら)
(米国)
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