ブリンケン米国務長官が訪中、非市場経済的な政策や慣行、過剰生産能力などに懸念表明(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月1日 14時10分
米国国務省は4月26日、アントニー・ブリンケン国務長官が4月24~26日に中国を訪問し、習近平国家主席や王毅・共産党中央政治局委員兼外交部長(外相)らと会談したと発表した。発表によると、米中双方はオープンなコミュニケーションラインを維持し、ハイレベル外交の継続で合意しつつも、ブリンケン長官は中国の非市場経済的な政策や慣行、過剰生産能力などに対して懸念を伝えた(注1)。同長官の訪中は、4月のジョー・バイデン大統領と習国家主席との電話会談で明らかにされていた(2024年4月3日記事参照)。
米中双方は、今回のブリンケン長官の訪中を通じて、2国間関係における重要な優先事項や地域的・世界的課題について実質的かつ建設的な議論を行った。その中でブリンケン長官は、フェンタニルなどの合成麻薬の米国への流入阻止のための協力、意図しない衝突を避けるための軍同士によるコミュニケーションの強化、高度な人工知能(AI)が抱えるリスクや安全性の管理に関する協議の開始など、2023年11月のカリフォルニア州での首脳会談(2023年11月16日記事参照)で合意された事項の履行を求めた。
ブリンケン長官はまた、貿易をゆがめ、米国の安全保障を脅かす中国の非市場経済的な政策と慣行や、中国の過剰な工業生産能力が世界経済に及ぼす影響について懸念を表明した(注2)。その上で、貿易や投資を過度に制限することなく、米国の先端技術が米国の安全保障や経済を損なうために利用されるのを防ぐことを含め必要な行動を取り続ける、とこれまでのバイデン政権の立場を繰り返し伝えた。そのほか、新疆ウイグル自治区などでの人権侵害や、ウクライナへ侵攻するロシアの軍事産業基盤への中国による支援についても懸念を示した。
ブリンケン長官は中国滞在中、習国家主席や王外相との面談のほか、王小洪・中国公安部長や陳 吉寧・上海市書記とも面談した。また、ニューヨーク大学上海校の学生とも面談し、学生間の相互交流の活性化を支援する旨を伝えた。同長官によれば、米国には約30万人の中国人留学生がおり、2023年は10万人以上の学生が米国で勉強するビザを取得した。一方で、中国への米国人留学生は、10数年前は約1万5,000人だったが、現在は800人ほどにとどまるという。
(注1)中国側の発表については、2024年4月30日記事参照。
(注2)米国は中国の過剰生産能力について、繰り返し懸念を表明している(2024年4月10日記事、2024年4月18日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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