セネガルの新政権誕生に対するフランスの反応(セネガル、フランス)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月16日 1時10分
セネガルで3月24日に行われた大統領選挙で、野党の労働・論理・博愛のためのセネガル・アフリカ愛国党(PASTEF)のバシル・ジュマイ・ファイ氏が、与党候補を大きく引き離し、当選した(2024年4月5日記事参照)。ファイ新大統領は4月5日に同党党首で反体制のシンボル的存在であるウスマン・ソンコ氏を首相に指名した。数年来、旧宗主国のフランスに対する強い批判を続けてきた同党の政権掌握に対し、フランス政府、メディアの反応は多岐にわたっている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ファイ氏の当選が確実となった投票日翌日の3月25日にX(旧Twitter)を通じて、セネガルで最も多く使われている現地語のウォロフ語とフランス語で同氏の当選を祝福し、「ともに仕事ができることを楽しみにしている」というメッセージを送った。3月29日には、マクロン大統領はファイ氏と初めて電話で会談し、マクロン大統領から両国間のさらなるパートナーシップの強化の意向を伝えた、とフランス紙ル・モンドが報道した。フランス外務省も同様のメッセージを発表し、セネガルの民主主義の伝統に基づき平和裏に大統領選挙が行われたことを祝福し、新政権への協力を約束した。
ファイ氏は、当選確実となった3月25日の演説で「セネガル国民は過去との決別を選んだ。」と発言した。「決別」が何を意味しているかに関し、フランス国際関係戦略研究所(IRIS)のキャロリーヌ・ルシー・アフリカ主任研究員は、「ファイ新大統領は今のところ、セネガルの主要な経済・金融パートナーである西側諸国、特にフランスとの関係を断ち切りたいという意図はなく、『高潔で相互の尊重に基づく生産的な協力関係』の構築を望んでいる」と分析し、「西側諸国との関係の再調整を意味していると考える。近年発生した近隣のマリ、ブルキナファソ、ニジェールでの軍事クーデターとその後のフランス排斥の動きとは相いれない」と述べている。
フランスとの経済関係の重要さは、数字からも明らかだ。セネガル在住のフランス人は2020年時点で2万2,000人以上、フランス在住のセネガル人は20万~30万人と推定される。セネガルにとって、フランスは最大の投資国であり貿易相手国だ。外国直接投資(ストック)の40%以上を占め、約250社のフランス企業が進出し、約3万人の直接雇用を生んでいる。また、フランス企業の売上高はセネガルのGDPの24%を占め、国家歳入の4分の1に貢献している。また、湾岸諸国、中国、トルコ企業など競争相手の台頭によりフランス企業のシェア低下が見られるものの、2022年の両国間の貿易額は前年比18%増を記録し、2023年も同じ傾向を示している。
旧フランス植民地時代の通貨制度に由来する、西アフリカ8カ国の共通通貨「西アフリカCFAフラン」からの脱退を公約に掲げるなど、フランス批判を前面に押し出して当選したファイ大統領だが、大統領就任後はフランスとの「新たな関係づくり」という慎重な発言を行っている。今後、フランスをはじめとする西側諸国と関係構築において、具体的にどのような方針や政策を打ち出すかが注目される。
(渡辺智子)
(セネガル、フランス)
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