「横浜市スタートアップビザ」利用した初の外国人起業家が誕生(横浜)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月13日 0時0分
横浜市で「横浜市スタートアップビザ」(注)を利用した外国人起業家によるスタートアップが初めて誕生した。韓国籍の白承蘭氏が設立したIT関連企業のナモス(NAMOS、本社:神奈川県横浜市)だ。オフィスの契約などの設立準備を終え、2024年2月から横浜市内で本格的に事業を開始した。
ナモスの白代表取締役(ジェトロ撮影)
白代表取締役は2001年に大学留学のために来日。卒業後は日本企業に就職し、約10年間勤めた。結婚後も日本にとどまり、出産と育児を経験。復職するに当たって「再び企業で働くよりも、自分の好きなことに思う存分挑戦したい」と思い、起業を選んだという。
横浜市で起業することを決めた理由として、「横浜市が運営するスタートアップコミュニティー『YOXO BOX(よくぞボックス)』や横浜企業経営支援財団などによる支援の充実に加え、スタートアップビザ制度もあり、外国人でも起業しやすいと考えた」と語った。市の担当者らと毎月1回行う定例面談で、不安なことや不明点を解消できた点も有益だったという。「市民や地元事業者のスタートアップビザ制度に対する認知度が高まれば、外国人による起業のハードルが下がるのでは」と普及に向けた期待を示す。
ナモスの起業支援を行ったのは、横浜市スタートアップビザ支援窓口。モノのインターネット(IoT)やライフイノベーションなどの特定の事業分野で、1年以内に横浜市内で起業を希望する外国人に企業準備支援を提供している。同窓口を運営するアンナハル(An-Nahal)の品川優代表取締役は、外国人が日本で起業する際に直面する課題として、銀行口座の開設、オフィスの賃貸、人材採用の3つを挙げる。「スタートアップビザ制度を利用することで、横浜市の支援を得ながらこれらの課題を解決できる可能性が高まる」と同制度の利点を語った。
アンナハルの品川代表取締役(左から2番目)と横浜市経済局イノベーション推進課職員(ジェトロ撮影)
横浜市はスタートアップビザ制度に加えて、海外スタートアップを対象とする実証支援プログラムを募集して提供する予定など、外国人起業家の誘致に積極的だ(2024年6月12日記事参照)。横浜市経済局イノベーション推進課の室田彩係長は「2024年秋には技術系スタートアップの支援拠点を新たに開設する予定。横浜市に所在するグローバル企業や大手日本企業の研究開発拠点と外国人起業家との結節点を提供し、イノベーションの創出を加速させたい」と意気込みを語った。
横浜市に居住する外国人は11万人超で、市町村別では大阪市についで全国第2位(注)。外国人が住みやすいだけでなく、起業しやすい街へと変化を加速させ、アジアをリードするエコシステムの形成を目指す。
(注)出入国在留管理庁「在留外国人統計」(2023年6月版)。
(芥川晴香)
(横浜)
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