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2024年の中東・北アフリカの成長率見通しは2.2%、石油減産と紛争により下方修正、世界銀行発表(中東、アフリカ、エジプト、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、レバノン)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月18日 16時20分

世界銀行は10月16日、中東・北アフリカ(MENA)地域の経済見通しに係る報告書「中東・北アフリカの成長」を発表した。2024年のGDP成長率は、金融引き締めの影響もあり、世界では2.6%との予測だ。MENAでは、2024年には2.2%、湾岸協力会議(GCC)6カ国は1.9%の成長予測だ。それぞれ2023年の成長率からは上向いたが、産油国の石油減産方針や、紛争など中東情勢の悪化が経済に影響を与えた。2024年のMENA地域の成長予測は4月時点で2.7%だったが、0.5ポイント下方修正された。

なお、パレスチナ自治区ガザの経済は停⽌しており、2024年第2四半期(4~6月)は前年同期比86%減、ヨルダン川⻄岸でも同23%減だった。

パレスチナ情勢悪化で特に近隣国経済に影響

イスラエルとハマスの衝突は、近隣諸国の経済活動にも影響を与えている。同報告書によると、ヨルダンの観光客数は8月時点で年率6.6%減少、エジプトでのスエズ運河の通行料収⼊は2023年後半と比べて2024年前半に62%減少した。レバノンでもイスラエルとの衝突の激化により、経済的な被害が拡⼤している。

イエメンのフーシ派による紅海通行の船舶への攻撃により、スエズ運河を経由する輸送の大幅な減少などの混乱があり、輸送時間と一部の航路の輸送価格が上昇した(2024年9月27日付地域・分析レポート)。一方で、原油価格は、短期的な変動はあったが、供給が堅調で需要低迷の懸念から、2023年10⽉以降に下落している。

紛争は企業活動にも影響

報告書によると、MENA地域で1990年代以降、紛争の発⽣件数は2倍以上になり、世界の死者数に占める割合は6倍に増加した。紛争は人的資本の損失や、避難・移住、インフラの破壊、サプライチェーン混乱を含む経済混乱が生じる。紛争がなければ、MENAの1⼈当たりの所得は、7年後に45%高かった可能性があったという。

カントリーリスクの高まりは、企業の⽣産活動にも影響を及ぼすという。企業の近くで発⽣した事件数や紛争数が多いほど、売り上げと原材料への⽀出が減少するとの分析もある。企業は売り上げが減少すると、⾮熟練労働者の雇⽤の割合を増やすことで、平均賃⾦を下げる傾向にあるという。

また、政情不安が事業運営上の大きな制約と認識する企業の割合は、MENA地域が最も⾼くて53%、次いで南アジアが39%だった。東アジアと太平洋地域は最も低く、9%だった。

なお、サブサハラ・アフリカ地域のGDP成長率は2023年に2.4%だったが、2024年に3%、2025年には4%台に加速する見通しだ(2024年10月17日記事参照)。

(井澤壌士)

(中東、アフリカ、エジプト、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、レバノン)

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