米商務省、東南アジア4カ国製の太陽電池にアンチダンピング関税の仮決定(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月3日 11時45分
米国商務省国際貿易局(ITA)は11月29日、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア4カ国製の太陽電池に対してアンチダンピング関税(AD)を賦課する仮決定を11月27日付で下したと発表した。近日中に官報で公示される。
ADおよび補助金相殺関税(CVD)は、WTO協定で認められた貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で賦課される。CVDは、政府補助金を受けて生産などされた貨物の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。米国政府は2024年4月以降、4カ国製の太陽電池に対するAD・CVDの発動要否を判断する事実確認調査を開始していた(2024年5月22日記事参照)。なお、CVDに関しては、10月1日に賦課の仮決定が発表され、10月4日に徴収が開始されていた(2024年10月3日記事参照、注1)。
ITAがADを賦課する仮決定を下したことで、官報公示と同日にADの徴収が開始されることになる。ADの仮税率は、カンボジアから輸入される場合は一般的には117.12%、マレーシアは17.84%、タイは57.66%、ベトナムは271.28%に設定された。4カ国の特定企業の製品に対しては、個別に税率が設定されている。なお、税率はITAの最終決定で変更される可能性がある。ITAは、最終決定を2025年4月中旬に発表予定としている。
トランプ次期政権下でも関税賦課は継続見込み
4カ国製の太陽光発電製品の米国輸入に対しては、今回のAD・CVDのほかにも、(1)1974年通商法201条(セーフガード)に基づく追加関税(2022年2月7日記事参照)が賦課されている。(2)また、4カ国が中国製の太陽光発電製品に対するAD・CVDを回避するための経由地となっているとの懸念から、4カ国の特定企業を除いて、中国製の太陽光発電製品に対するAD・CVDが賦課されている(2023年8月24日記事参照)。(3)さらに、中国の新疆ウイグル自治区がサプライチェーンに関与する製品の米国輸入を禁止する「ウイグル強制労働防止法(UFLPA、注2)」に基づく水際措置も、マレーシア、タイ、ベトナム製の太陽光発電製品に対して重点的に執行されている。
なお、(1)セーフガードはトランプ前政権下で賦課開始、(2)中国製の太陽光発電製品に対するAD・CVDはオバマ元政権下で賦課開始された。(3)UFLPAはバイデン政権下で施行されたが、トランプ前政権後期から人権保護を目的とした同自治区産品の輸入規制が講じられてきた。これらに加えて、ドナルド・トランプ次期大統領が外国製品に対するさまざまな関税賦課を主張していることを踏まえると、次期政権下でもおおむねこれら措置の継続が想定される。
(注1)CVD仮決定は、各官報(カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)を参照。
(注2)UFLPAの概要や動向は、ジェトロ特集「ウイグル強制労働防止法」を参照。
(葛西泰介)
(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム、中国)
外部リンク
- 経済産業省とJBIC、モロッコ政府とそれぞれ覚書に署名(日本、モロッコ)
- 中国、物流コスト削減の行動計画を発表(中国)
- 日系企業のベースアップ率や給与水準明らかに、2024年度アジア・オセアニア日系企業実態調査(マカオ、ASEAN、インド、インドネシア、韓国、カンボジア、シンガポール、スリランカ、タイ、台湾、中国、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、香港、マレーシア、ミャンマー、ラオス、オーストラリア、ニュージーランド)
- 上海市第三人民法院、過去10年間の「知的財産権司法的保護状況と典型案件例」を公表(中国)
- ジェトロ、日本とつながり深いインド工科大の2校を日本企業に紹介(インド、日本)
- ジェトロ、ベトナム人留学生と日本企業の交流イベント「未来トーク」開催(ベトナム、日本)
- 11月のインフレ率は前年同月比4.9%、6年半ぶりの低水準(パキスタン)
- 2025年度歳出計画、福祉政策は拡充も、総額は減少(メキシコ)
- 大連市で自動車輸出用物流センターが運営開始(中国)
- 上海市、低空域飛行活動の管理体制強化の実施方案を発表(中国)
この記事に関連するニュース
-
米USTR、重要鉱物など5品目の対中追加関税の対象拡大・関税引き上げを発表、2025年1月1日から(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月12日 11時0分
-
米、東南アジア4カ国からの太陽光パネルに反ダンピング関税の仮決定
ロイター / 2024年12月2日 8時0分
-
複数の米シンクタンク、トランプ次期政権の一層の対中強硬姿勢を指摘、中国側の受け止めも解説(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月25日 10時45分
-
米シンクタンク、トランプ次期政権の外交政策を解説、対中政策に柔軟性指摘も(米国、日本、中国、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、メキシコ、ロシア、ウクライナ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月25日 0時40分
-
米議会諮問委、中国に対する対外投資規制の強化やPNTRの撤回を提言(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月21日 14時55分
ランキング
-
1安倍昭恵さん、晋三氏が亡くなった後もトランプ氏と定期的に電話…「マール・ア・ラーゴ」で夕食会へ
読売新聞 / 2024年12月13日 16時18分
-
2尹大統領弾劾案、可決ライン迫る 韓国国会、午後採決
共同通信 / 2024年12月14日 11時51分
-
3化学兵器で「汚染リスク」 シリア空爆でOPCW懸念
共同通信 / 2024年12月13日 9時8分
-
4「南京事件」から87年、習近平主席は記念行事を欠席…日本大使館は「反日感情が高まりやすい」と注意呼びかけ
読売新聞 / 2024年12月13日 17時57分
-
5韓国「非常戒厳」後、ハッカーが活発化…「セキュリティー」意識が重要
KOREA WAVE / 2024年12月14日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください