ムンバイ・ナバシェバ港とASEAN各国の貿易動向(インド)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月22日 0時45分
インド2位のコンテナ取扱量を誇る西部ムンバイのナバシェバ港(JNPT=Jawaharal Nehru Port Trust)では、2024年3月に3国間貿易に対し、より厳格な原産地確認を求める通達が同港税関職員向けに出されたことで、特にASEAN-インド自由貿易協定(AIFTA)に基づく特恵税率適用や、通関手続きの遅れが生じている(2024年6月17日記事参照)。
こうした輸入手続き厳格化の背景として、ナバシェバ港のASEAN各国からの輸入が近年増加傾向にあることも理由の1つとしてみられる。近年のナバシェバ港とASEAN各国の貿易動向は、次のとおりとなっている。
添付資料表1および表2は、ナバシェバ港とASEAN各国との貿易推移を示したものだ。2023年のナバシェバ港からASEAN10カ国への輸出は52億9,400万ドルだったのに対し、輸入は100億7,700万ドルに上る。輸出入ともに増加傾向にあるが、輸出が2020年比で約4割増だったのに対し、輸入は約8割増となり、特にコロナ禍以降に輸入が大きく増えており、貿易収支はインド側の入超が続いている状態だ。輸入相手国は、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムなど、ASEANの中で工業化が進展した国からの割合が高く、これら5カ国で輸入の96.9%を占める。
添付資料表3および表4は、2023年の輸出入品目をHSコード4桁ベースで示したものだ。輸出は冷凍牛肉やアルミニウム塊、冷凍魚などの一次産品が比較的多く含まれているのが特徴だ。一方、輸入はパーム油を除いては機械類、電気機器類、プラスチック品、化学品など、インド国内の工場で生産するための資本財や生産財が多く輸入されている状況がうかがえる。
貿易赤字削減のため「メーク・イン・インディア」政策を掲げ輸出の増加を図るインドだが、ナバシェバ港の対ASEAN貿易を見る限り、インド側の入超は引き続き増加傾向にある。こうした背景からも、ナバシェバ税関の昨今のFTA手続きの厳格化については今後も動向を注視していく必要があろう。
(水谷俊博)
(インド)
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