米中高官交流が再開、米国内では対中政策に懸念の声、ジェトロの米中月例レポート(2024年4月)(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月7日 9時50分
ジェトロは6月6日、米国の対中国関連政策についてまとめた2024年4月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。
2023年11月に行われた米中首脳会談で合意された、米中両国の高官による対話継続は(2023年11月16日記事、2023年11月17日記事参照)、2024年2月には2回に減少し(2024年4月8日記事参照)、3月には開かれなかったが(2024年4月15日記事参照)、4月には複数回の高官交流があった。
4月2日にはジョー・バイデン大統領と習近平国家主席が電話会談を行い、2国間、地域問題、地球規模のさまざまな問題について、率直かつ建設的な議論を行った。また、バイデン大統領は、台湾海峡の平和と安定維持の重要性、南シナ海における法の支配と航行の自由の維持、中国によるロシアの防衛産業基盤への支援に対する懸念と米国の立場を表明した(2024年4月3日記事参照)。
4月3~9日にはジャネット・イエレン財務長官が中国を訪問し、李強首相、何立峰副首相ら複数の要人と会談し、新たなイニシアチブを発表した(2024年4月10日記事参照)。4月16日にはロイド・オースティン国防長官の董軍国防相との初会談が行われ、米中両国間の国防関係や、地域および全世界的な安全保障上の問題を含む幅広い内容について協議を行った。4月24~26日にはアントニー・ブリンケン国務長官が中国を訪問し、習国家主席や王毅・共産党中央政治局委員兼外交部長(外相)らと会談した(2024年5月1日記事参照)。
高官の対話が増えた一方、米国内では、対中政策に対し産業界からさまざまな懸念が浮上している。米国連邦議会上院は4月23日、中国発の動画共有アプリ「TikTok」の規制法案を賛成多数で可決、バイデン大統領が翌24日に署名し、同法案は成立した(2024年4月25日記事参照)。しかし、米国内では既にTikTokを利用したビジネスが定着しており、TikTok米国部門の米企業への売却など「適切な分割」が実現しなかった場合の経済的影響を懸念する声が上がっている。
そのほか、全米外国貿易評議会(NFTC)など米国の大企業を代表する主要団体は、米国通商代表部(USTR)が2023年10月以降、デジタル貿易の国際ルール形成に関する基本姿勢の変更を示唆する動きを示していることに対し、その転換はルール形成の主導権を中国に奪われるリスクにつながるとして、安全保障にも悪影響を及ぼすなどとの懸念を明確に表明している。USTRは2023年10月に、WTO加盟の複数国で電子商取引(EC)に関する貿易関連ルールを交渉する共同声明イニシアチブ(JSI)の会合で、越境データフローなど複数の提案への支持を撤回して以降、自国民のデータ保護などを重視する姿勢を明らかにしている(2024年5月30日記事参照)。
米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。
(谷本皓哉)
(米国、中国)
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