米カリフォルニア州、労働者の「つながらない権利」法案の議会審議が進む(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月10日 0時25分
米国カリフォルニア州議会では、マット・ヘイニー下院議員(民主党、サンフランシスコ選出)により2024年2月に提出された、労働者の「つながらない権利」(注)を保証する法案(AB-2751)の審議が進んでいる。ヘイニー議員は「スマートフォンやパンデミックにより、仕事は10年前と比べて劇的に変化した。あいまいになっている仕事と生活の境界線を設定し、24時間365日働かないことを理由に罰せられないようにすることがこの法案の狙い」と複数のメディアに述べた。審議中の草案では、雇用者が雇用契約書などの書面に非就業時間を記載し、被雇用者との間で合意することを義務付けており、違反した場合には1件につき100ドル以上の罰金が科される内容となっている。同様の法律は、2017年にフランスで初めて制定され、メキシコ、アルゼンチン、オーストラリアなどで制定されている。今回、カリフォルニア州で成立すれば、米国の州では初めてとなる。
他方、労働組合があまり浸透していないテクノロジー業界、スタートアップなどを中心に、産業界からは反対の意見が出ている。
アーリーステージのスタートアップを中心に投資するアクセラレーターのワイコンビネーター(Y Combinator)創設者のポール・グラハム氏は、自身のX(旧Twitter)で報道を引用し、「いくつかの最高の仕事は深夜に行われる。それはスタートアップだけでなく、研究でもそうだ。気が散ることなく難しい問題に取り組める時間だからだ。重要なブレークスルーを報告するメールは、多くが業務時間外に送られている」と投稿するなど、起業家やスタートアップの関係者からの反対意見があがっている。
カリフォルニア商工会議所のマシュー・ロバーツ副会頭とアシュリー・ホフマン上席政策顧問は「この法案は、カリフォルニア州の雇用を奪う法案。企業規模の大小を問わず、緊急時以外の雇用主と従業員の間のコミュニケーション、従業員同士のコミュニケーションを禁止するものだ。また、いわゆる超過勤務などの、米国やカリフォルニア州法規制の適用対象外(Exempt)の従業員がこの規則の対象となるかどうかが明記されていない」と述べた。さらに、「既にカリフォルニア州には、時間外手当、食事・休憩手当、待機手当など、所定労働時間外の労働を抑止するための、米国で最も厳しい労働法があるため、この法案の必要性を感じない」と述べた。
(注)雇用主からの就業時間外の電話、電子メール、メールなどの対応を拒否する権利。
(芦崎暢)
(米国)
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