連邦政府、賃貸住宅開発促進のため改正法案を公表(オーストラリア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月15日 14時20分
オーストラリア連邦政府の財務省は4月9日、賃貸住宅(Build To Rent:BTR)(注)の建設や投資を促す税制優遇措置を導入するため、2024年財政関連法改正案のドラフトとその内容を発表した。連邦政府は2024年7月1日からの5年間で、立地条件の良い住宅を120万戸建設するという目標を掲げている。賃貸住宅分野の投資促進を支援することで、住宅供給不足の課題を解決していく狙いがある。
財務省は2023年5月9日に発表した2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の予算案で、BTRの税制優遇措置を導入することを発表(2023年6月8日記事参照)しており、その施策を今回法制化する。今回の法案で、税制優遇措置の対象となるBTRプロジェクトは、50戸以上を有する一般向けの賃貸用集合住宅を建設するプロジェクトが対象となる。また、少なくとも15年間は賃貸住宅の所有者が単独の必要があり、またその集合住宅戸数の最低10%は、賃貸市場相場賃料より低額で賃貸可能な住宅にする必要がある。具体的な優遇措置として、例えば、BTRプロジェクトへの投資促進のため、投資信託制度であるマネージド・インベストメント・トラスト(管理投資信託)を通じてBRTプロジェクトへ投資する場合、その収益分配金に対して、投資家に課税される源泉徴収税の税率が通常30%から15%に下げられる。財務省は改正案について、4月29日までパブリックコメントを実施している。
オーストラリアでは、もともと賃貸住宅の物件数が少なく、新型コロナ禍以降、海外からの移民や留学生が増加したことで、賃貸住宅が慢性的に不足、家賃は高騰している(2023年8月9日記事参照)。現地不動産ポータルサイトを運営するドメイングループによると、2024年2月の国内平均空室率は0.7%と1%を下回っている。
住宅産業の業界団体であるプロパティ・カウンシルは、4月9日付のプレスリリースで、政府のBTRに関する法案は、住宅供給の政府目標の達成に向けて重要であり、政府の優遇措置により、2033年までに15万戸の賃貸集合住宅が新たに増加すると試算している、と発表した。
(注)賃貸住宅(Build To Rent:BTR)は、個人オーナーによる戸単位の賃貸住宅とは異なり、賃貸用に開発された集合住宅のこと。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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