ドイツ、国境管理を強化、全ての陸上国境で検問を実施(ドイツ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月19日 11時40分
ドイツ内務・地域省は9月9日、非正規移民の制限と国内の治安対策のため、9月16日から隣国との全ての陸上国境で国境管理を実施すると発表した。
同省は9月9日に欧州委員会に対し、9月16日からフランス、ルクセンブルク、オランダ、ベルギー、デンマークとの陸上国境で一時的な国境検問を6カ月間実施すると通告。既にオーストリア、スイス、チェコ、ポーランドとの間では国境検問が行われており、ドイツでは隣国との全ての陸上国境で検問が導入されることになる。EU法および国内法に基づき、入国拒否も含むあらゆる措置が講じられるとのこと。連邦警察は状況に応じて、入国条件に関して、国境通過に必要な書類を重点的に検査するとしており、旅行者や通勤・通学者に身分証明書の携行を求めている。また、EU加盟国以外の国籍者には必要に応じてビザなどドイツ入国に必要な要件を満たす必要がある。検問の規模や場所、期間などは地域ごとに異なる可能性があり、検査は抜き打ちで行われる。
検問実施の理由について、同省は非正規移民の制限と治安の維持を挙げ、ウクライナ避難民やそのほかの庇護希望者の受け入れに伴う、宿泊施設や教育、統合における地方自治体の対応能力の限界を考慮する必要があり、テロや越境犯罪からの防御も重要と表明した。ナンシー・フェーザー内務・地域相は「新たな欧州共通の庇護(ひご)制度やそのほかの対策によりEUの対外国境の警備が強固になるまでは、われわれの国境で管理を強化することが必要」と述べた。8月23日にはドイツ西部ゾーリンゲンで刃物による殺傷事件があり、庇護手続きのためドイツからブルガリアに移送予定だったシリア国籍の男が容疑者として拘束された。また、9月1日のドイツ東部2州での議会選挙では、移民政策や治安に有権者の関心が集まっていた。
経済界からは不安の声も
経済紙「ハンデルスブラット」(9月10日)に対して、ドイツ卸・貿易業協会(BGA)のディルク・ヤンドゥラ会長は「政府が現在発表しているような人の移動の自由(Personenfreizügigkeit)の制限は経済、特に卸売業と貿易業に常に遅れとコストの増加をもたらす」と述べた。また、ドイツ輸送・ロジスティクス連盟(DSLV)のフランク・フスター会長も同紙に対し、「ドイツ入国の際の路上検問は国境を通過する多くのトラックを遅延させる可能性が当然ある」と述べた。ドイツ全土での国境検問がもたらす経済への影響が懸念されている。
(近藤慶太郎)
(ドイツ)
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