トランプ米大統領、2月4日からカナダとメキシコに25%、中国に10%の追加関税を決定(米国、カナダ、メキシコ、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年2月3日 11時40分
米国のドナルド・トランプ大統領は2月1日、カナダとメキシコ産の全製品に25%、中国産の全製品に10%の追加関税を課す大統領令を発令した(注1)。ただし、カナダ産のエネルギー・エネルギー資源(注2)は10%の追加関税となる。いずれも既存の関税率に今回発表の率が上乗せされる。米国東部時間2月4日午前0時1分以降に通関された製品に適用される。
今回の関税の特徴は、根拠法として国際緊急経済権限法(IEEPA)が用いられており、発動までに産業界など利害関係者からの意見聴取の機会が設けられなかったこと、そして適用除外となる品目がなく国単位での全面的な追加関税となることだ。早速、3カ国は反発の声明を発表し、カナダとメキシコは米国製品の輸入に対して報復関税を課すと発表した。関税の応酬が口火を切った中、最大の焦点は米国側の関税が早期に撤回されるか否かだ。トランプ政権のファクトシートによると、関税の目的は3カ国からの不法移民とフェンタニルをはじめとする違法に製造された麻薬性鎮痛薬の米国への流入を阻止することにある。そして、関税はそれらの流入がやむまで継続するとしている。裏を返せば、流入がやめば関税は撤回されることになる。大統領令でも第3条(a)で、国土安全保障長官が、他国が十分な対策を取った場合には大統領に報告し、大統領もそう判断した場合には関税は撤回される、と明記している。ただし、客観的な基準は何も示されておらず、2国間協議を経てトランプ氏が納得するかどうか次第とみられる(注3)。
米国内では、産業界を代表する米国商工会議所が、政権が国境管理の問題に焦点を当てたことは正しいが、関税は問題を解決しないばかりか米国の家計にとっての物価上昇とサプライチェーンへの甚大な影響をもたらすだけだと懸念する声明を出すなど、複数の団体が関税発動に否定的な声明を発表している。
トランプ氏はこのほか、EUに対する追加関税、また品目別で原油ガス、半導体および関連製品、鉄鋼・アルミニウム・銅製品、医薬品にも追加関税を課すと発言しており、国内からの懸念に反してこれらを実行に移すのか目が離せない状況だ。
ジェトロは本件に関して、経済産業省と共同で「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を設置し、積極的な相談対応・情報提供を行っていく。
(注1)日本時間2月3日午前10時時点ではカナダに関する大統領令のみが、ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されているが、メキシコと中国に関する同様の大統領令も追って掲載されるものと見込まれる。なお、カナダに対しては、輸入貨物の申告額が800ドル以下の場合に関税を免除し、原産地などの情報の申告を不要とする非課税基準額(デミニミス)ルールを適用しないとしている。
(注2)1月20日発表の大統領令「国家エネルギー非常事態の宣言」の第8条で定義されており、原油や天然ガス、リースコンデンセート(主に天然ガス田の井戸元で生産される超軽質原油の一種)、液化天然ガス(LNG)、石油精製品、ウラン、石炭などが含まれる。
(注3)第1次トランプ政権ではメキシコに対して(2019年6月10日記事参照)、2025年1月26日にはコロンビアに対して(2025年1月27日記事参照)、いずれも不法移民問題を理由に追加関税を課すことを発表していたが、2国間協議を経て発動前に撤回された経緯がある。
(磯部真一)
(米国、カナダ、メキシコ、中国)
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