フィリピン国内の防衛産業発展に向けた法案、マルコス大統領が署名(フィリピン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月22日 16時15分
フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は10月8日、同国内の防衛産業の発展を目的とした自立防衛体制法案(SRDP法、共和国法第12024号)に署名した(注1)。同法は、フィリピン国内での新技術開発支援や防衛装備品の国産化促進によって持続可能な防衛産業を育成し、海洋権益の保護やサイバーセキュリティー侵害の防止など、国防強化を目指すもの。
フィリピンの2024年国家予算では、国防費が前年比21.6%増と、他部門と比較して大幅に増額した(2024年1月17日記事参照)。同国は昨今、南シナ海をめぐり中国との対立が続いており(注2)、米国やオーストラリア、日本、カナダ、フランスとは合同軍事演習を実施するなど、連携を強めている。直近では、10月7日に行われた韓国との首脳会談で、2国間の関係を戦略的パートナーシップに格上げし、その合意文書内には防衛関係の強化も含まれた。こうした状況を踏まえ、同法はフィリピン政府の優先審議法案として、成立が急がれていたものの1つだった。
父の故マルコス元大統領の政策を更新
SRDP法ではフィリピン国防省に対し、新たなSRDPプログラムの策定と実施を義務付けている。既存のSRDPプログラムは、1974年に故フェルディナンド・マルコス元大統領(現マルコス大統領の父)の政権下で開始されたものだ。現マルコス大統領は既存のプログラムの成果を評価した上で、「フィリピンの防衛分野は、現在も他国からの提供や販売に大きく依存している」と指摘した。新たなプログラムでは、国内での防衛関連物資の開発やサービス、運用に取り組む地場企業、または60%以上をフィリピン人が所有する企業を優遇し、同国内の防衛産業育成を図る。なお、生産に必要な資材がフィリピン国内で入手できない場合に限り、輸入資材の内国歳入税や付加価値税(VAT)、関税が免除される。
(注1)SRDP法は、官報や新聞での公示から15日後に発効する。
(注2)フィリピンと中国の両外務省は9月11日に南シナ海に関する「第10回2国間協議メカニズム(BCM)」を開催し、両国は南シナ海周辺の領有権をめぐる対立について、外交ルートで対話を継続して緊張緩和に向けた方法を模索していくことを確認した。
(西岡絵里奈、アセンシオ・アシュレイモイラ)
(フィリピン)
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