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海上輸送の混乱で欧米向けのピークシーズンが約1カ月早く到来(中国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月19日 11時50分

紅海でのイエメンのフーシ派による船舶攻撃の危機などを受け、世界的な物流の混乱と輸送費の高騰は、中国を発着する物流にも影響を及ぼしており、港での待ち時間の発生や運賃の高騰が起きている(2024年7月19日記事参照)。輸送時期の調整や、輸送モードの切り替えなどの対応が生じているケースもみられている。

米国小売り大手ウォルマートに商品を供給する中国の輸出事業者は、クリスマス関連商品の欧米向け輸出に関して、例年は7月から9月にかけてピークシーズンを迎えるが、紅海危機による物流の混乱を受け、1カ月早く出荷するように求められていると報道されている(「金投網」7月2日)。

ジェトロは7月11日、上海市に拠点を置くNX国際物流(中国)の海運輸送担当者に、現在の海運輸送の状況について話を聞いた。同担当者によると、中国発の貨物について、荷主は航路期間の長期化や、在庫積み増し目的により、輸送開始時期を早めているという。その担当者は「例年は8月から11月が輸送のピークシーズンに当たるが、2024年は6月後半から始まっており、1カ月ほど早まっている」と話し、こうした状況がコンテナ輸送運賃の急激な上昇につながっていると指摘した。また、米国東海岸向け航路では、パナマ運河の水位低下による運航制限を受けた輸送遅延による価格上昇も起きているという。さらに、同担当者は米国向けの輸送について「米国では(11月に)大統領選挙を控える中、ドナルド・トランプ前大統領が再選すれば、関税が大幅に引き上げられる可能性があるとの見方から、11月以前に輸送したいとの荷主の意向もあるようだ。貨物量の増加、運賃の上昇につながっている」と述べた。

海上輸送の停滞や価格上昇を受け、中国では、欧州方面への輸送について、海上輸送から中欧班列の鉄道に輸送モードを切り替える動きもみられる(2024年6月25日記事参照)。習近平国家主席は上海協力機構(SCO)首脳会議に出席するため、カザフスタンを公式訪問した際、7月3日に同国のカシムジョマルト・トカエフ大統領とともに「中国-欧州カスピ海横断直通エクスプレス」(注)開通式に大統領府からオンラインで出席した(2024年7月11日記事参照)。中国の国際道路輸送における新たなルートとして、中国~欧州の物流ルートをより多様化させている。

上述のNX国際物流(中国)の海運輸送担当者は中欧班列の利用状況について、「海上輸送の運賃上昇を受けて、中欧班列を利用した輸送への需要も増えている。当社では2024年上半期の中欧班列の利用量が前年同期比で3倍増となった」とコメントした。他方、足元の状況について、同担当者は「鉄道(中欧班列)の利用急増により、輸送時間が10日程度伸びており、価格、輸送日数のバランスを見極める必要も出ている。今後の動向を注視する必要がある」と語った。

(注)中国国内から道路輸送を活用してカスピ海沿岸の港まで直通輸送する新たなルート。中国国内から鉄道で新疆ウイグル自治区のコルガス口岸まで輸送し、その後、トラックによる陸路輸送に切り替えて、コンテナをカスピ海沿岸まで輸送。車両のまま船でカスピ海を横断する。従来は鉄道輸送でカスピ海沿岸まで運んでおり、車幅の違いからカザフスタンで積み替えが必要となっていたことから、より迅速な輸送が可能となる。

(神野可奈子)

(中国)

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