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米財務省、金融サービスのAI利用に関する機会とリスク評価に着手(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月10日 13時30分

米国財務省は6月6日、金融サービスでの人工知能(AI)の利用状況や、その開発・利用がもたらす機会やリスクに関して、パブリックコメントを募ると発表した。今後、正式に官報で公示する(注)。

財務省は、パブコメを通じて金融機関のAI利用に関する理解を深めることを目指すとしている。官報案では具体的に、金融商品・サービスの提供判断、不正資金などリスク管理、資本市場での取引判断、内部業務管理、顧客対応、規制対応、マーケティングなどの分野で、金融機関がAIをどのように利用しているか、あるいは利用を検討しているかに関心があるとした。AIの利用は金融機関の具体的な利益につながる可能性があるとした一方で、その利用方法によっては、消費者や企業にさまざまなリスクをもたらす可能性があると指摘。具体的には、不透明なAIモデルが偏見(バイアス)を持った判断を下すリスクや、個人のプライバシーを侵害するリスクなどを例示し、消費者や企業がこれら潜在的なリスクからどのように保護され、リスクについて周知されているかに関心があるとした。また、金融サービスのAI利用に財務省などが講じ得る法規制・監督強化の提言などを求めるとした。財務省は、金融機関に限らず、消費者、中小企業、学術機関、非営利団体など金融サービスのエコシステムにおける幅広い利害関係者からコメントを募るとしている。

また、財務省など金融関係当局で構成する金融安定監視評議会(FSOC)は6月6~7日、米国シンクタンクのブルッキングス研究所と共同で、AIが金融システムの安定性に及ぼす潜在的なリスクについて議論する会議を開催した。同会議で基調講演を行った財務省のジャネット・イエレン長官は「AIが適切に利用されれば、効率性、正確性、金融商品へのアクセスを改善できる」とその有用性を指摘した。一方で、金融システムに及ぼすリスクについて「AIモデルの複雑性や不透明性、リスク管理の枠組みの不十分さ、多くの市場関係者が同じデータやモデルに依存することで生じる相互関連性から具体的な脆弱(ぜいじゃく)性が生じる可能性がある」と指摘した。

なお、FSOCは2023年12月に公表した年次報告書の中で、金融システムの新たな脆弱性として、金融サービスのAI利用を指摘した。報告書では、多くのAIには「説明可能性(explainability)」という問題があり、AIモデルの妥当性や信頼性の評価や、AIが生み出した成果物の正確性やバイアスの評価が難しいとしている。加えて、AIシステムが大規模なデータセットや第三者ベンダーに依存することで、データ管理、プライバシー、サイバーセキュリティーに関する運用上のリスクが生じるとした。

(注)コメントは官報公示日から60日後まで、オンライン(連邦政府ポータルサイト)で受け付ける。詳細は官報案を参照。

(葛西泰介)

(米国)

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