バイデン米大統領、ウクライナの鉄鋼製品に対する232条関税の適用除外延長を発表(米国、ウクライナ、ロシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月4日 11時40分
米国のジョー・バイデン大統領は5月31日、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税(232条関税)について、ウクライナの鉄鋼製品に対する適用除外措置を2025年6月1日まで延長する大統領布告を発表した。
1962年通商拡大法232条は、特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を与えると判断される場合に、政権が追加関税賦課などの輸入制限措置を講じる権限や手続きを定めている。米国はトランプ前政権下の2018年3月に、国家安全保障上の理由から鉄鋼・アルミニウム製品の国内生産は不可欠である一方、輸入増加により国内産業が損害を受けているとして、全貿易相手国からの鉄鋼・アルミニウム製品の輸入に対して232条関税の賦課を開始した。2024年6月時点で、鉄鋼製品は25%、アルミニウム製品は10%の追加関税が賦課されている。
ただし、一部の国・地域からの輸入に対しては、適用除外、数量割当、関税割当(注)が設けられている。ウクライナの鉄鋼製品に対しても、バイデン政権下の2022年5月の大統領布告(10403号)で1年間の適用除外措置が講じられた。また、2023年5月の大統領布告(10588号)で適用除外措置を1年間延長するとともに、対象をEU加盟国で加工されたウクライナの鉄鋼製品に拡大した。今回発表された大統領布告は、この適用除外措置をさらに2025年6月1日まで1年間延長するもの。
大統領布告では適用除外措置の延長の理由について、ロシアによる侵攻によって、ウクライナの鉄鋼産業は著しい混乱状況にあり、同国の鉄鋼生産が減少していることを挙げた。2023年のウクライナから米国への鉄鋼の輸入量は、2022年比で減少かつ2021年以前の平均輸入量を下回っており、米国への鉄鋼の総輸入量の1%未満だという。また、ウクライナにとって鉄鋼は歴史的に重要な産業だとした上で、「米国とウクライナの双方は、経済的なライフラインとして鉄鋼産業の維持に関心を持っている」とした。
(注)対象国・地域は次のとおり。
鉄鋼の適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ、EU(ウクライナで溶解・鋳造された製品に限る)、ウクライナ
鉄鋼の数量割当:アルゼンチン、ブラジル、韓国
アルミの適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
アルミの数量割当:アルゼンチン
鉄鋼・アルミの関税割当:EU、英国
鉄鋼の関税割当:日本
(葛西泰介)
(米国、ウクライナ、ロシア)
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