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米薬局チェーン大手ウォルグリーン、大規模な店舗閉鎖を計画、「薬局砂漠」拡大の懸念(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月3日 0時45分

米国の薬局チェーン大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(本社:イリノイ州)は、6月27日に開いた2024年第3四半期(2024年3〜5月期)の決算発表時の電話会見で、不採算店舗の大規模な店舗閉鎖を検討していると発表した。米国内の約9,000店舗のうち、全体の25%の店舗が検討の対象になる。同社は2024年2月以降だけでも米国内で484店舗を閉鎖するなど事業の縮小に取り組んできたが、小売部門の売り上げ減や医薬品の利益率低下などによる業績の悪化を踏まえ、さらなる閉鎖に取り組むことにした。

同社のティム・ウェントワース最高経営責任者(CEO)は投資家に対し、「米国の小売薬局は、米国の消費者に対する継続的なプレッシャーを目にしてきた。われわれの顧客は購入の際、商品を厳選し、かつ、価格に敏感になってきている」と説明、2024年度の小売売上高は3%減少し、2025年度も逆風が続くと見込むなど「厳しい経営環境が続く」と予想し、「改善は期待できない」と述べた。

ウォルグリーン以外の米国の大手薬局チェーンも、相次いで店舗を閉鎖している。小売業界のアナリストによれば、(1)アマゾンやターゲットなどの電子商取引(EC)・小売業者との競争激化、消費行動の変化、万引きなどの犯罪、人員不足、店舗への投資不足といった小売事業の不振、(2)新型コロナウイルスのワクチンや家庭用検査キットなどの販売減少、医薬品の利益率の低下など薬局としての収益性の悪化、の2つの要因があるとしている(「ワシントン・ポスト」紙電子版6月27日)。こうした要因を受け、2023年に破産を申請したライトエイド(2023年10月17日記事参照)は500店舗以上を閉鎖したほか、CVSヘルスも2021年に3年間で900店舗を閉鎖すると発表し、2024年に入り既に約300店舗を閉鎖した。

業界全体での店舗閉鎖が進んだ結果、米国ボストン大学の調査研究メディアサイトの「ザ・ブリンク」によると、過去数年間の薬局チェーンの大規模な店舗閉鎖によって、米国の主要都市ではすでに「薬局砂漠(Pharmacy deserts、注)」が形成されており、黒人やラテン系、マイノリティーのコミュニティーに甚大な影響を与えているという。特に地方都市や低所得者層が多く居住する地域で薬局へのアクセスが限られた場合には、治療に欠かせない医薬品を入手することが困難になり、その結果として、コントロールが不可能な慢性疾患を抱える患者が増え、病気の期間が長くなり、時には生命を脅かす合併症を引き起こす危険性もある。

米国では、低所得者層や有色人種居住区への影響を懸念する抗議が起こっており、マサチューセッツ州下院議員のアヤンナ・プレスリー氏および同州上院議員のエド・マーキー氏とエリザベス・ウォレン氏(いずれも民主党)は、「これらの閉鎖は、地域に重大な薬局と食品の砂漠を生み出すもので、交通手段の欠如を生み出した歴史的・人種的および経済的差別の大きな負のレガシーの中で起こっているものだ」と、人種格差への懸念を示している。

(注)郊外における薬局砂漠とは、大半の人々が最寄りの薬局から2マイル(約3.2キロ)以上、車を持たない場合は0.5マイル以上離れた場所に住む場合を指す。また、地方における薬局砂漠とは、最寄りの薬局から10マイル以上離れた場所に住む場合を意味する。

(樫葉さくら)

(米国)

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