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英国、最後の石炭火力発電所を廃止、G7で初(英国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月10日 0時10分

添付資料PDFファイル(112 KB)

ドイツのエネルギー大手ユニパーは9月30日、英国内最後の石炭火力発電所ラトクリフ・オン・ソア発電所の運転終了を発表した。同発電所はイングランド北部ノッティンガム近郊に位置し、1967年に運転を開始した。発電容量は2ギガワット(GW)を誇り、約200万世帯分の電力を賄える規模だった。

英国は、同発電所の廃止によって、G7で初めて石炭火力を全廃した国となった。2021年6月には当初計画していた石炭火力の全廃を1年前倒し、2024年9月末までの廃止を発表した(2021年7月7日記事参照)。それ以降、2023年3月にドラックス発電所(1.29GW)とウェスト・バートンA発電所(2GW)、2023年9月にキルルート発電所(0.56GW)が立て続けに廃止された。

英国の電力部門の脱炭素化は着実に進んでいる。2023年の総発電電力量に占める石炭火力の割合は1.3%にとどまり、2012年の39.2%から大きく減少している。石炭火力に代わって台頭したのは風力発電で、2023年には陸上・洋上を合わせて発電電力量は82.3テラワット時(TWh)と、総発電電力量の減少とも相まって、全体の28.1%となり、2012年の5.5%から大幅に増加した(添付資料図参照)。

ベースロード電源確保に課題

一方、石炭火力に代わる安定供給に欠かせないベースロード電源(注)としては、原子力発電が挙げられる。英国は2022年4月に発表した「エネルギー安全保障戦略」で原子力発電について、2030年まで最大8基の原子炉新設、2050年まで最大24GWの出力整備、電力需要の最大約25%を賄うことを目標に掲げるが、道のりは険しい。2030年までには稼働中の大型原子力発電所のほとんどが廃止予定となっているほか、建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所は大幅な工期の遅れやコスト超過などにより建設が難航している。建設計画中のサイズウェルC原子力発電所は、最終投資決定(FID)までに必要な規模の開発費(DEVEX)の調達が困難とされ、DEVEXに対する大型の補助金制度が発表された(2024年9月12日記事参照)。

並行して、小型モジュール炉(SMR)の開発も検討されている。原子力産業を支援する政府組織グレート・ブリティッシュ・ニュークリア(GBN)主導で技術コンペティションが進行中で、2024年後半に最終選考結果を発表し、2029年までに2つのプロジェクトのFIDを行う予定。GBNの9月25日の発表では、GE日立ニュークリア・エナジー、ロールスロイスなど4社にまで候補企業が絞り込まれている。

(注)ベースロード電源とは、季節や時間を問わず、低廉かつ安定的に発電できる電源。

(奈良陽一)

(英国)

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