フィッチ、政治的混乱を受け、オーストリア国債の見通し格下げ、連立交渉は続く(オーストリア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月20日 0時0分
格付け会社のフィッチ・レーティングスは1月10日、オーストリアの長期外貨建て発行体デフォルト格付け(LT IDR)の見通しを「AA+(安定的)」から「AA+(ネガティブ)」に引き下げると発表した。その理由として、フィッチは前回2024年7月の評価以降のオーストリアの財政とマクロ経済的な展望の悪化を挙げた。フィッチによると、同国は依然として比較的高い信用度と返済能力を維持しているものの、2024年秋の国民議会選挙後の政治的混乱が必要な財政・経済政策の実施を困難にすることがリスク見通しに影響を及ぼした。
2024年9月29日に行われた国民議会選挙では、極右の自由党(FPÖ)が得票率29%弱で第1党となった(2024年10月24日付地域・分析レポート参照)。極右が政権を握るのを防ぐために、アレクサンダー・ファン・デア・ベレン大統領は第2党の国民党(得票率26.3%)のカール・ネハンマー首相に組閣を委任し、11月18日から中道左派の社民党(同21.1%)、リベラル派のネオス(同9.1%)との連立交渉が開始した。しかし、現地報道によると、財政赤字の削減手段に関して合意ができず、1月4日に交渉が決裂、ネハンマー氏は首相と党首を辞任した。これを受けて、大統領は自由党のヘルベルト・キクル党首に組閣を委任し、8日から自由党は国民党と本格的に連立交渉に入っている。選挙からは既に3カ月以上経っており、早期の組閣が望まれているが、両党はこれまで敵対していた。移民政策や経済政策などでは一致しているが、EUの環境政策やロシアとの関係、ウクライナ支援などでの立場は大幅に異なる。交渉開始後初の記者会見で、キクル氏と国民党のクリスティアン・シュトッカー新党首は早期の連立交渉妥結に意欲を示した(現地紙「クライネ・ツァイトゥング」1月13日)が、交渉がまとまるか見通しはまだ不透明だ。
経済界には、自由党と国民党の連立政権に対して、期待と懸念が入り混じっている。企業家連盟(IV)のゲオルグ・クニル会長は経済誌「トレンド」に、両党は「強いチームになり得る」ポテンシャルがあると述べ、2年以上続く不況への素早い対応を要求した。また、製造業の復活のためには、労働コストとエネルギー価格の削減と行政改革が必要で、国の豊かさの長期的な維持と競争力向上のためには不評を買ってでも、年金制度改革や各種支援金の削減、効率向上と構造改革などを実施すべきだと述べた。
一方、クニル会長は自由党のEUと外国人に対する立場を疑問視し、EUとの積極的な協力や外国からの高度専門人材の受け入れ促進も、経済界にとってなくてはならないものだと強調した。気候保護政策の必要性に懐疑的な自由党が財政赤字削減のため環境政策予算の縮小を優先するとみられており、経済界などからは補助金が廃止された場合の影響に懸念が示されている。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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