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米エネルギー省が温室効果ガス強度測定のパイロットプロジェクトを発表、通商政策に応用(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月27日 13時0分

米国のエネルギー省(DOE)は9月25日、特定の工業製品の温室効果ガス(GHG)強度(注1)を測定するパイロットプロジェクトを実施すると発表した。DOEは今回の取り組みを通じて、ホワイトハウスの「気候、貿易、産業競争力に関するタスクフォース」による、通商政策を利用した気候変動対策を支援する。

DOEは発表で、排出量の少ない必須資材に対する世界的な需要が高まっており、世界中で気候変動に焦点を当てた通商政策が新たに導入されていることなどから、米国だけでなく、貿易相手国なども含めて、エネルギー集約型工業製品のGHG強度を測定するための公正で首尾一貫したシステムが必要だとした。また、ホワイトハウスの「気候、貿易、産業競争力に関するタスクフォース」が、特定の工業製品のGHG強度の測定ツールの開発を目指していることから、DOEは、既存の情報源からのデータを組み合わせたGHG強度を測定するプロジェクトを通じ、タスクフォースの取り組みを支援するとした。2024年内に開催予定のウェビナーで、パイロットプロジェクトの詳細を関係者に伝える予定だという。

ジョン・ポデスタ大統領上級補佐官(国際気候政策)は2024年4月に、「気候、貿易、産業競争力に関するタスクフォース」の設置を発表していた。ポデスタ補佐官は、同タスクフォースの活動内容に、(1)カーボンリーケージ(注2)などに対処する気候と通商に関係する政策ツールキットの開発、(2)気候に関する通商政策を実施するための信頼性が高い詳細なデータの取得、(3)気候変動対策という新しい競争関係の中で製造業を支援できる方策の明確化、を挙げていた。

今回の発表の背景には、EUが炭素国境調整メカニズム(CBAM)に基づく措置を先行して講ずる中(2023年10月3日記事参照)、米国では連邦レベルで統一された基準が設定されていないとの問題意識があるとみられる(2021年9月14日付地域・分析レポート参照)。実際、世界の鉄鋼・アルミニウムを巡る炭素排出と過剰生産問題への対処を取り決める、米国とEUによる「鉄鋼・アルミニウム・グローバルアレンジメント」の交渉では、米国の生産者がEUのCBAMの下でどのように扱われるかといった点で交渉がまとまらず、協議が行き詰まっていた(米通商専門誌「インサイド・US・トレード」9月25日)。

なお、今回のDOEの発表に対し、米国鉄鋼製造業者協会(SMA)は「われわれの会員企業は、世界で最も排出量の少ない鉄鋼製品を製造している。われわれは、排出量の優位性を示すツールを開発し、それらのツールを米国の労働者や米国内鉄鋼業界の支援に役立て、米国がそうしてきたように、他国にも鉄鋼業界の脱炭素化を促すために、政権と協力できることを楽しみにしている」と、今回の発表を歓迎する声明を発表した。

(注1)エネルギー消費当たりのGHG排出量を指す。

(注2)規制の緩い国・地域へ製造拠点を移転することや、それらの国・地域からの輸入が増加すること。

(赤平大寿)

(米国)

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