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米USTR、カナダによる中国製EVへの追加関税を歓迎、米国の関税引き上げ時期はさらに延期(米国、カナダ、中国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月2日 14時25分

米国通商代表部(USTR)は8月29日、カナダによる中国の不公正な貿易慣行への対処を理由とした追加関税措置を歓迎するというキャサリン・タイ代表の声明を発表した。カナダは8月26日に、中国の電気自動車(EV)と一部のハイブリッド乗用車、トラック、バス、輸送用バンに100%、鉄鋼とアルミニウム製品に25%の追加課税を賦課すると発表していた(2024年8月30日記事参照)。一方、USTRは8月30日、米国の中国産EVなどに対する追加関税率引き上げ時期のさらなる後ろ倒しを発表した。

タイ代表はカナダに対する声明で「カナダが、中国による市場主義的産業を脅かす、国家主導の不公正で反競争的な非市場的政策と慣行に対し、強力な行動を取るとの決定を称賛する。カナダの行動は、EV、鉄鋼、アルミニウム産業で、労働者と企業が公正に競争できるための重要な一歩だ」と述べた。また、USTRの発表によると、タイ代表は声明を発表した前日の28日に、カナダのメアリー・エング輸出促進・国際貿易・経済開発相と会談しており、タイ代表はエング貿易相に直接、カナダによる追加関税賦課の発表を歓迎したと伝えた。両者はまた、EVなどの北米サプライチェーン強靭(きょうじん)化といった共通のコミットメントについて議論し、非市場的政策や慣行に対する協力の重要性を確認した。

なお、米国による中国製EVへの関税率引き上げはいまだ行われていない。USTRは5月に、中国原産のEVなどに対する1974年通商法301条に基づく対中追加関税率を8月1日から100%に引き上げると発表した(2024年5月23日記事参照)が、その後、最終決定は8月中に行うと発表した(2024年7月31日記事参照)。USTRは今回、追加関税率引き上げの最終決定を「近日中に行う」とし、さらなる後ろ倒しを発表した。

タイ代表とエング貿易相との会談では、中国に対する追加関税のほか、カナダによるデジタルサービス税(DST)、乳製品の関税割当(TRQ)措置、針葉樹製材製品の貿易についても議論した。米国は、ユーザーのデータやコンテンツ提供などに依拠する特定のデジタルサービスなどに課税するカナダのDSTは米国企業を狙い撃ちしているとして撤回を求めているほか、乳製品のTRQは、低税率での輸入枠の大部分を米乳製品業者と競合するカナダの乳製品加工業者のために確保していることが米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)違反になると主張している(2024年4月5日記事参照)。針葉樹林については、カナダがスタンページ制度(注)を運用することで、カナダ製材が不当に安い価格で米国に輸出されているとして、長年、アンチダンピング税(AD)と補助金相殺関税(CVD)を課している。

(注)州有林・連邦有林の伐採権を払い下げる制度。米国の製材業界は、カナダの製材がスタンページ制度での低い立木価格の設定により安価で輸出され、米国で高い市場シェアを維持していると問題視している。

(赤平大寿)

(米国、カナダ、中国)

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