米財務省、IRAに基づく賃金・見習いボーナス税額控除に関するガイダンスを発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月21日 14時55分
米国財務省は6月18日、インフレ削減法(IRA)に基づく賃金・見習いボーナスクレジットに関するガイダンスを発表した。
同ガイダンスは、クリーンエネルギーの生産〔内国歳入法(IRC)45Y〕や施設への投資(IRC48E)(2024年6月7日記事参照)、およびこうした施設・設備に必要な部品を製造する施設への投資(IRC48C)など(注1)に関し、施設の建設などにあたって一定の基準以上の賃金を支払い、見習い労働者を一定以上雇用した場合に、税額控除を5倍にすることなどを規定したもの(注2)。バイデン政権は気候変動対策を進めるにあたり、高賃金の雇用を生み出すことを企図しており、賃金・見習いボーナスクレジットはその取り組みの核となる。ガイドラインは、同クレジットの要件を示しており、賃金に関してデービス・ベーコン法(注3)に基づいて労働省が定める基準(実勢賃金率)に準拠すべきことや、見習い労働者について適格性の基準を定めている。内国歳入庁(IRS)はこれらに関する概要資料も公表している。
また、ガイダンスが順守されるよう、IRSは(1)労働省と協力し共同で普及・啓発活動を行うことや、検査担当官向けトレーニングを強化することなどを内容とする覚書(MOU)を2024年末までに締結する、(2)税額控除を受ける者が基準を満たしていない可能性がある場合にIRSに通報できる仕組みがあることを周知する、などに取り組んでいくとしている。
同ガイダンスは、6月25日に官報に掲載される予定で、掲載後60日後に発効する。バイデン米政権はこのところIRAに関連する各種ガイダンスの最終規則化を急速に進めている。こうした動きは、仮に11月の連邦議会選挙で共和党が多数派になった場合でも、規則が議会審査法(CRA)のルックバック(見直し)規定(2024年5月30日付地域・分析レポート参照)の対象にならないようにするため、との指摘もある(政治専門紙「ポリティコ」6月18日)。ガイダンスの中には、先端製造業に対する税額控除(IRC45X)(2023年12月18日記事参照)やクリーンエネルギーの生産(IRC45Y)など最終規則化に至っていないものもあり、これらがどのようなスピード感で最終規則化されるのか注目される。
(注1)具体的に対象となるのは、30C(代替燃料自動車の燃料供給設備への投資)、45、45L(住宅のエネルギー効率改善)、45Q(炭素隔離装置の製造)、45U(ゼロエミッション原子力による発電)、45V(クリーン水素の製造、2024年1月4日記事参照)、45Y、45Z〔持続可能な航空燃料(SAF)などのクリーン燃料の製造〕、48、48C、48E、179D(商業ビルのエネルギー効率改善)となっている。
(注2)45Lおよび45Uについては見習い要件が適用されないなど、複数の例外規定がある。
(注3)連邦政府が資金援助する建設事業などの請負業者が労働者に支払う賃金などを定める法律。
(加藤翔一)
(米国)
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