米国10州で人工妊娠中絶に関する住民投票、アリゾナ州など7州で権利拡大(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月19日 0時15分
米国で11月5日に行われた大統領選挙に合わせて、米国の10州で人工妊娠中絶の規則に関する住民投票が行われた(2024年10月31日記事参照)。10州中7州(ニューヨーク、コロラド、メリーランド、ネバダ、モンタナ、アリゾナ、ミズーリ)で、人工妊娠中絶の権利を拡大する規則が可決された。他方、3州(フロリダ、サウスダコタ、ネブラスカ)では可決されず、引き続き現行の規則が有効となる。
権利が拡大された7州のうちアリゾナ州では、ケイティ・ホッブス知事(民主党)が5月に、人工妊娠中絶をほぼ全面禁止していた法令を正式に廃止する法案に署名し、妊娠15週目までの人工妊娠中絶が認められていた(2024年5月7日記事参照)。今回の住民投票により、妊娠約24週目まで認める法案が、賛成61.6%、反対38.4%で可決し(開票率95.8%、アクシオス11月6日)、人工妊娠中絶の権利が拡大した。
ミズーリ州は、2022年6月に「ロー対ウェイド判決」が破棄(2022年6月27日記事参照)された同24日、州法で人工妊娠中絶の禁止を始め、医療的緊急時を除き人工妊娠中絶の全面禁止法を取り入れた初の州となった。だが、今回の住民投票で、「同州における人工妊娠中絶禁止法を撤廃することと、政府の干渉なしに生殖医療に関する決定を下す権利の確立を認めつつ、妊娠24週目以降の人工妊娠中絶を制限・禁止する」ことに対して、賛成51.6%、反対48.4%となり、中絶の権利が大幅に拡大された(開票率99%、アクシオス11月6日)。
一方で、住民投票で、人工妊娠中絶の権利を拡大しない結果となった3州の詳細は次のとおり。
〇フロリダ州:「(妊娠約24週間目まで、注)の人工妊娠中絶と、医療提供者が患者の健康を守るために必要であると判断した場合の人工妊娠中絶は、いかなる法律も、禁止、処罰、延期、または制限すべきではない」に対し、賛成57.2%、反対票42.8%だったが(開票率99%、アクシオス11月6日)、同州で修正案が可決するには60%の賛成が必要なため否決された。なお、2024年5月1日から同州で認められている人工妊娠中絶は妊娠6週目までとなっているが、それまでは15週目まで認められていた(2024年4月12日記事参照)。
〇サウスダコタ州:禁止法を緩和して妊娠12週目までは人工妊娠中絶を受ける権利が守られる「憲法修正案G」の可否が問われた。結果は、賛成41.4%、反対58.6%となった(開票率99%、アクシオス11月6日)。現行と変わらずほぼ全面禁止となる。
〇ネブラスカ州:人工妊娠中絶に関する2つの住民投票が行われた。「妊娠約24週目までの人工妊娠中絶を認めるべき」とする「第439号議案」は賛成48.7%、反対51.3%で否決された(開票率98%、「ワシントン・ポスト」紙11月15日)。「特定の場合を除き妊娠13週目以降の胎児は人工妊娠中絶から守られるべき」とする「第434号議案」は賛成55.1%、反対44.9%となり(同前)、いずれも、人工妊娠中絶の権利は拡大しない結果となった。
(注)胎児が子宮外でも生存する状態(fetal viability)に到達するまでの時期で、米国ではこれを妊娠約24週目としている。
(吉田奈津絵)
(米国)
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