トランプ米大統領が就任、優先政策分野を発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月21日 10時0分
米国で1月20日に大統領就任式が行われ、ドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任した。同日、ホワイトハウスは、トランプ大統領の優先政策分野を示した「トランプ大統領の米国第一の優先事項」を発表した。
「米国を再び安全に」「米国を再び手頃な価格でエネルギー大国に」「既得権益の一掃」「米国の価値の復活」の4項目にわたって、トランプ大統領が優先的に取り組む政策分野が示された(添付資料表参照)。最初の「米国を再び安全に」では、国境の壁の建設、不法入国者に対する亡命の廃止など、主に不法移民対策を掲げた。トランプ大統領は、選挙期間中から強硬な不法移民対策の必要性を繰り返し訴えていた。共和党の政策綱領で示された「速やかに達成する20の約束」でも、「国境を封鎖し、移民の侵入を阻止する」「米国史上最大の強制送還作戦を実行する」を最初の2つに記載しており(2024年8月9日付地域・分析レポート参照)、政策的優先度の高さがうかがえる。「米国を再び手頃な価格でエネルギー大国に」では、エネルギー緊急事態の宣言やパリ協定からの再度の離脱などを示した(2025年1月21日記事参照)。「既得権益の一掃」では、「必要不可欠な分野を除いて官僚の採用を凍結する」「バイデン政権で発表された、まだ発効していない負担の大きい急進的な規制を一時停止する」などと記載した。一般的に、大統領令で定められた規則は大統領令で撤回可能であるほか、一定期間内であれば、政府が制定した規則を連邦議会による承認の下で失効させられる議会審査法(CRA)もある(2024年5月30日付地域・分析レポート参照)。「米国の価値の復活」では、「男性と女性を生物学的な現実として確立し、急進的なジェンダーイデオロギーから女性を守る」と記載した。
通商政策については、「米国を再び手頃な価格でエネルギー大国に」で、「米国第一の通商政策を発表する」との記載にとどまった。トランプ大統領は就任演説でも、「私はただちに、米国人労働者と家族を守るために貿易システムの改革に着手する」と述べたが、具体的には「全ての関税、税、収入を徴収する外国歳入庁を設立する」と述べたのみで、全ての輸入に10~20%の関税を課すベースライン関税、メキシコやカナダに対する追加関税、中国に対する追加関税率の引き上げなどについては触れなかった(注1)。就任初日には追加関税を課す発表はせず、米国の貿易赤字の恒常化を緩和し、他国による不公平な通商政策、為替政策についての調査や、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、注2)および2020年に発効した中国との第1段階の経済・貿易協定(2020年1月17日記事参照)の順守状況の評価などを指示する、と報道されている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版2025年1月20日)。
(注1)トランプ大統領が提示する関税政策については、2024年12月10日付地域・分析レポートなど、特集「トランプ新政権の米国を読む」を参照。
(注2)USMCAは2026年に見直しが予定されており、米国は完成車の原産地規則の厳格化などを検討しているとされる(2024年6月28日記事参照)。特集「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を取り巻く環境」も参照。
(赤平大寿)
(米国)
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