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USTRによるサプライチェーン強靭化に資するパブコメ募集終了、米産業界からはFTA求める声も(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月7日 14時45分

米国通商代表部(USTR)は6月6日、サプライチェーンを強靭(きょうじん)化する貿易・投資政策策定のためのパブリックコメントの募集が終了したと発表した。USTRは3月にパブリックコメントを募集すると発表し、4月に公聴会の追加開催を発表していた(2024年4月5日記事参照)。

発表によると、公聴会で84人が証言したほか、労働組合、労働や環境に関する非政府組織(NGO)、シンクタンク、企業、外国政府などが300件弱のコメントを提出した。USTRのキャサリン・タイ代表は、「米国の通商政策の転換期」にパブリックコメントに参加したステークホルダーに感謝すると述べた上で、「サプライチェーンの強靭性を高めるためには、これまでの政策アプローチを見直し、創造的かつ戦略的に考える必要がある」と指摘した。バイデン政権は、関税削減など市場アクセスを中心とした従来の通商政策から脱却し、サプライチェーンの強靭化や労働者の権利保護を通商政策の中心に据えることの必要性を繰り返し説いている(2024年2月9日付地域・分析レポート参照)。

労働組合はこうした政権の姿勢を支持しており、全米鉄鋼労働組合(USW)は今回のパブリックコメントで、米国内のサプライチェーン再構築と労働者中心の通商政策を掲げるバイデン政権を支持するとの意見を提出した。インフラ投資雇用法(IIJA)やインフレ削減法(IRA)を称賛し、一層、貿易投資政策を労働者に資する産業政策に統合していくべきだと主張した。

一方で、米国商工会議所は、政権が進める米国内での製造能力強化は、米国の産業界が競争力を有する条件の下で輸出できなければ成功しないとして、貿易相手国の市場開放を伴う通商政策の必要性を訴えた。具体的には、市場アクセス交渉を含む自由貿易協定(FTA)の重要性を訴えた。また、米国製造業の競争力強化を目的に、米国で生産していない原料や中間財の輸入関税を削減または撤廃する「諸関税法(MTB)」(注1)の必要性についても言及した。昨今、米国内で議論が激化しているデジタル貿易については、あらためて米国がルール形成を主導すべきと主張した(注2)。業界横断の企業連盟であるグローバル・データ・アライアンスも、同盟国やインド太平洋経済枠組み(IPEF)参加国などと共に、米国が主導してデジタル貿易ルールを形成するべきと述べた。

米国半導体工業会(SIA)も、市場開放を基にした通商政策の重要性を強調した。米国の半導体の輸出増加が、プリント基板製造・組み立て、重要材料加工、半導体組み立て・テスト・パッケージングを含む米国の半導体サプライチェーンを補完するとした。SIAもまた、FTAの重要性について言及した。そのほか、多くの国が半導体産業に対する奨励策や支援策を展開しているとし、同盟国などと協力しながら、各国の奨励策への相互の無差別的なアクセスを確保できる政策を強く求めるとした(注3)。

USTRは、今回のパブリックコメントを踏まえて、サプライチェーンの強靭化に資する新たな政策手段やアプローチを検討し、追加的な情報を本取り組みに関する特設ページに掲載するとしている。

(注1)MTBは2020年末で失効している(2020年12月25日記事参照)。

(注2)米国商工会議所は、越境データフローなどを支持しており、USTRによるWTOやIPEF交渉におけるデジタル貿易ルールへの支持撤回を批判している(2024年6月6日記事参照)。

(注3)SIAは、米国の特定の半導体に対する輸出管理においても、米国単独の措置は米国産業界の不利益になるとして、同盟国などと連携した措置を講じるよう訴えている(2023年10月18日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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