中国の李強首相がロシアを訪問、経済含む今後の協力を議論（ロシア、中国）

中国の李強首相のロシア訪問に伴い、8月21日にロシアのミハイル・ミシュスチン首相との間で第29回ロ中首相定期会合が開催された。2024年5月の両国首脳会談（2024年5月28日記事、2024年5月30日記事参照）を受け、政府間で国際関係に関する情勢認識や2国間関係の方向性についての議論が行われた。会合後に両首相により署名された共同コミュニケには、経済、文化・教育、国際協力などでの両国の考えと今後の方向性が幅広く盛り込まれた。

経済分野に関する主な内容は次のとおり。

Eコマースの拡大などを通じて両国間貿易の構造改革を行う。安定したサプライチェーンを共同で確保する。
物流、ゲームやアニメーションを含むクリエーティブ産業などサービス分野での協力を強化する。物流関連では、北極海航路の活用を含む海運のほか、鉄道や両国間を結ぶ道路整備での協力を行う。
ロシアからの豚肉や畜産飼料、水産物の輸出を促進させる。
民間航空機、電力関連機器、化学、冶金（やきん）、林業での協力促進に向けた環境整備を行う。
情報通信技術（ICT）分野での教育、人材育成や両国間をつなぐ光ファイバー網の設置に関して交流を強化する。また、人工知能（AI）分野の協力ための作業部会を設置する。
機械設備、交通・輸送、化学、軽工業、鉱山開発、気候変動分野などでの投資協力を行う。
エネルギー分野では、ロシアから中国への原油・ガス・パイプライン建設への支持をあらためて表明するとともに、再生可能エネルギー、水素、蓄電池、カーボン排出取引、原子力発電などでも協力を進める。
金融分野では、両国間での貿易取引などに関する決済システムの強化、銀行・保険分野での協力拡大を図る。

投資協力に関し、両国政府は新たなロ中投資協力計画を策定した。現在、両国間でガス化学、農業、自動車などの分野で総額18兆ルーブル(約28兆4,400億円、1ルーブル＝約1.58円）、86のプロジェクトが実施されている（ロシア経済発展省発表8月22日）。

金融分野での協力は、米国などによる、海外の金融機関が保有するロシアの外貨準備の凍結を念頭に置いたものとみられる。コミュニケでは、外貨準備の第三国による凍結に対する非難も盛り込まれた。

（欧州課）

（ロシア、中国）